しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

アラサー青春18きっぷ東北1人旅 1

2022年、8月3日。06時50分。

ファミリーマートの自動ドアを出た途端に襲いかかる熱波。吹き出る汗。真夏の歌舞伎町は朝から暑かった。

東横の凄惨な景色を眺めながら角ハイのプルタブを捻る。

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皆が皆、思い思いの格好で寝ている。こんなことができるのはある意味日本の治安の良さでもある。どんだけ酒飲むんだよ。

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落ちていた紙からは実家への熱い想いを感じとれる。

とまぁなんでこんなところでフラフラしているのかというと、今回旅をするにあたって8月3日から1週間ほど仕事の休みを取ったのだが、仕事終わった直後から飲みだしてしまい、新橋で記憶を飛ばし、気がつくと早朝の新宿歌舞伎町にタイムスリップしていたのだ。つまり今回は異次元転生物語である。

とりあえずハイボールを一本飲み切り、新宿駅に向かう。さて出発しますか。と思ったら旅の荷物を全て無くしている。

と思って焦ったのだけれど考えてみれば舞浜の自宅に置いたまま飲みに繰り出してしまっていた。一旦家に寄ってから旅に出ることにした。

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舞浜駅にて購入。

と、ここで青春18きっぷを知らない方に向けて解説。

 

青春18きっぷ(せいしゅんじゅうはちきっぷ)は、旅客鉄道会社全線(JR線)の普通列車、快速列車が12,050円(大人、子供同額)で1日乗り放題を5回利用可能[1]となる、販売および使用期間限定の特別企画乗車券(トクトクきっぷ)である。

利用期間は学生・生徒がおおむね長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)に入る期間で[2]、その開始約10日前から終了日の10日前まで発売される。

春季[7]
発売期間:2月20日- 3月31日
利用期間:3月1日- 4月10日
夏季[7]
発売期間:7月1日- 8月31日
利用期間:7月20日- 9月10日
冬季[7]
発売期間:12月1日- 12月31日
利用期間:12月10日- 1月10日
ゴールデンウィークは利用期間に含まれていない。なお、秋は、秋の乗り放題パス(2012年[8]から[9]。2011年までは鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ)が発売されている。

払い戻しは、利用期間内で5回とも未使用の場合に限り取扱箇所で行える(220円の払戻し手数料がかかる[10])。利用期間が終了した後は5回とも未使用でも払い戻しは受けられない。列車の運休・遅延等による場合など、いかなる理由でも一度使用開始した回(日)の取消はできず、払い戻しおよび利用期間の延長もできない。利用期間が終了したきっぷは5回使用していなくても無効となり、次の利用期間にまたがって使用することはできない。

(Wikipedia引用)

といった感じだ。飲んでて気づかなかったが、朝新宿で18きっぷを買ってから家に立ち寄れば安く済んだのにバカなことをしてしまった。まぁ、旅にはミスやトラブルは付きものだ。

何はともあれ、旅のスタートである。

今回東北を目指す理由は大きく2つ。過去に日本の様々な都道府県を旅してきて、まだ踏破していない場所が数件県残っている。それが山形、秋田、青森だ。この3県を回ることができれば47都道府県、つまり日本全国巡りきったことになる。

そしてもう一つは、青森で行われるねぶた祭りだ。8月2日〜8月7日の5日間で行われる祭りで、お盆休み前のど平日に行われるものだから仕事をサボらないと観にいけない。

ねぶた祭りは、仕事に追われる日々に終止符を打たないと観れない、というどこか己を試されているようなスケジュールだ。全日観てもしょうがないので最終日に、全国踏破のフィナーレにねぶた祭りで締めくくれたらいいな。と思ってある程度イメージして日程を組んだ。

一応、理想としてもう一つの「裏プラン」もある。旅で色々と気が変わってしまって、仕事を辞める決意に至ったら、青森から北海道に渡り、稚内からロシアのウラジオストク渡航。そこからシベリア鉄道を使い半月ほどでヨーロッパを目指す。というものだ。一応そうなってもいいだけの最低限の交通費だけは確保しているので、その他諸経費は旅先のギャンブルで増やせればいい。

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ジョルダンのサイトを使うと(無料)青春18きっぷで乗れる電車のみで時刻表が検索できる。到着時間としてはこの通り。画面から途切れてしまっているが、今日目指している福島県郡山駅には最速で17時23分となっている。

6回乗り換えで6時間15分。これはあくまでも乗り換えを1、2分でこなし、コンビニもトイレも行かない場合の時間である。それはもはや修行になってしまうし、情緒もへったくれもない旅になるので、あくまでも時刻表は参考程度、である。

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JR京葉線で舞浜から東京へ。

ディズニーが嫌いな男がディズニーに1番近い街舞浜に住んでみた感想としては、なによりも公共機関がクソになる。出勤時も帰宅時もディズニーに向かうリア充の人々の群れに揉まれなければならず、世界で自分だけが仕事に向かっているかのような錯覚になる。ストレスで周りの人間の頭からネズミの耳が生えているように見えてくる。

あとは、20時30分に天候や風向きが良ければ毎日花火が上がる。転居当初は「毎日花火がベランダから観れる」という口説き文句で女を連れ込むのに最高だ!と思っていたけれど、花火も日常化し、部屋の中でも花火の音が聴こえるから「あぁ、いま20時半か。そろそろ寝るか。」と、時報代わりに使ったり、花火が鳴らないから今日は南風が強い、なんて風向きが分かる程度である。

ついつい愚痴が長くなってしまったが、東京駅に到着し、乗り換え。

京葉線ホームはもはや有楽町駅の方がちかいから有楽町駅に改名してもいいのだが、頑なに東京駅だと言い張っている。さすが「"東京"ディズニーランド」が沿線にあるだけのことはある。京葉線から乗り換えを10分で向かうのは不可能なのでここで諦め、駅弁を買ってから乗り換えた。二日酔いが凄まじいのでコーヒーに切り替える。上野東京ラインで一気に宇都宮を目指す。

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駅ビルにたまに見かける魚力はわりと旨い。保冷剤を額に当てると少しだけ二日酔いの頭痛が和らいだ。

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1408(14時08分。今後この表記になります)。宇都宮駅到着。宇都宮は何度か訪問済みでそれなりの土地勘がある。駅前には対してなにもなく、栄えている繁華街は写真のマーキングされている一帯だから今回は寄るのを辞めた。

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宅建士試験の家庭教師の仕事が入ったので駅ナカのカフェに入り、zoomで1時間授業を行う。オンラインでの授業は時間も場所も選ばずにPayPayで即金が稼げるので旅に最適である。授業を終えてコーヒータイムを挟み、改めて出発することに。

1519が出発してしまっているので1546発の電車を待ち、乗り込む。買った角ハイ500mlを流し込む。だいぶ二日酔いが治ったのか、美味い。こりゃいい旅になりそうだ。

 

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1611。黒磯駅

那須塩原に電車で行く場合はここの駅からバスに乗っていけば良いが、僕にとってはただの乗り換えの駅でしかない。駅前にはかなり綺麗な図書館があり、リゾート地の税収の見込みを感じ取れる。ここで宇都宮線が終着を迎え、東北本線に乗り込む。角ハイの補充をしようとしたが駅近くにコンビニがなく諦めた。

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1809。新白河駅。看板のビジュアルも街並みもどこも「新」っぽさは無い。同じホームでそのまま福島行きの東北本線に乗り換えるので、ぼーっと待つ。駅を出てもコンビニは無さそうだ。

山の裾野に沈んでいく夕日が美しかった。どれだけ世の中が変化しても、時代が変わっても、夕日は変わらず裾野に沈む。

奥の細道で有名な松尾芭蕉も日光方面から、ここ白河あたりを抜け、郡山も通っている。きっと当時の松尾芭蕉も、この美しい夕日を眺めていたのかもしれない。

初日から何事もなく順調に旅が進み、これだけ美しい夕日が眺められた。なんと幸先が良いことか。これまでの旅の辛苦を思い出すと涙が滲む。

飛行機でタバコを吸って降ろされそうになったり(これは自己責任)、

韓国で金が尽きてデジカメを売り飛ばしたり(これも自己責任)、

電車に揺られながら競輪に賭けてタコ負けしたり(ただの自己責任)、

前途多難であった。きっと因果なのだ。よっぽど自分は悪いことをして生きてきたのだ。

それがやっと、穏やかな旅が出来るのだ。よっぽど日頃の行いが良かったに違いない。

やっと次の電車が来た時には、辺りは薄暗くなり始めていた。1843。定刻通り電車は出発した。1922には着く。もう少しで郡山だ。

 

しばらく電車に乗り続け、いくつかのトンネルを抜けると、なぜか次第に外は暗くなり、暗雲が立ち込め、雨が車窓を叩き始めた。おかしい、天気予報は晴れだったのに。そう思い、改めて天気予報を調べることにした。

つづく