しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

2020-01-01から1年間の記事一覧

僕たちはあいみょんを抱けない

「僕はあいみょんを抱けない。」 日曜日。曇り空。昼の居酒屋。少し薄暗い店内にまばらな客。その中に僕の声明が響いた。 人生において何の接点もない老若男女がこの居酒屋にランダムに集い、そして僕の「あいみょん」を「抱けない」という声が鼓膜を伝い、…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 9

1月6日。 西成の光と闇をずいぶんと満喫したこの数日を振り返りながら目が覚めた。今日も二日酔い。鉄格子がクネクネと、砂漠の陽炎のようにうねるのをみながら、あぁ、昨日も飲み過ぎた。と後悔の念が押し寄せた。 もう正月も明けてしまった。 朝6時。外に…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 8

「おうー!あんちゃんマルフクにおったやん!!」 はまちゃんの声はボリューム調整のつまみが壊れたラジオみたいなデカさだ。とりあえず僕のピンクジャケットではまちゃんも僕のことを思い出してくれたらしい。ぼくとはまちゃんの意外な関係性を知った東さん…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 7

軽い頭痛にうなされながら寝返りをうった。いまの夢はなんだ??知らないおっさんが舌を出している。ぼんやりと目を開ける。一瞬、ここはどこだ?となったのだが、昨日の出来事を思い出し、そしてドヤにたどり着いて倒れ込むように寝たことを思い出した。 窓…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 6

1月5日。深夜0時を回った。 西成の街はどこかしこもシャッターを閉ざし、眠りについていた。その街の街頭の下を、赤い頭とピンクの服がうごめく。 「この辺の飲み屋さんは面白いですよー。ま、私は行ったことないんですがね。」 ヨネさんは行ったこともない…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 5

少しずつ、空が白んできた。 銀色を帯びた雲が風で流れつつ、新しい一日の始まりを日の出が教えてくれた。 僕は結局どこのホテルにも泊まるつもりはなく、その辺の路上の脇に寝袋をひいて寝た。もちろん、地面に体温を奪われないようにマットは持参していた…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 4

23時33分。 涙を流しながら見える車窓からの景色は、漆黒の闇だけだったが、車内のアナウンスで流れた「広島」というワードが僕の心に小さなともしびを滾らせた。次第に漆黒の中に点々と灯りが見え始め、車両はホームに流れ着いた。広島だ。 閑散としたホー…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 3

後悔はしたくない。その一心だった。荷物をそそくさとまとめ、駅に出た。ここからの乗客は居ないのか、すぐさま走り出す電車。ホームには3人の影が取り残された。その時、ユウキは言った。 「まっ、さっきの話、ウソなんだけどな。」 「う、ウソだと?マジか…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 2

1月3日。午前11時。 元日に熊本に到着してからは、地元の友人と会っては酒を呑み、と楽しい2日間を過ごし、そしていま、僕は西熊本駅に着いた。無人の改札を抜けてホームに出る。冷たい風が肌を刺すが、正月らしい快晴。なんてめでたいんだ。こんな日にまさ…

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 1

年が明けた。 2020年、1月1日。令和に改元されてから初めての正月。世の中は浮かれていた。そして当然、浮かれて軽トラとかひっくり返しちゃう渋谷の街も浮かれていて、そこに住むイカれた住人も浮かれていて、この僕も相当に浮かれきっていた。 毎年のこの…