しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

 

 


パンツに穴が開いた。

 


それはまるで最初から決められていたかのように、そこに穴があった。

 


用を足す時にパンツを膝のところまで下げた時に私は見つけた。

 


直径4センチほどの穴。

 


あぁ。開いてしまった。穴が。

 


私はつぶやいた。

 


直径4センチの穴。

 


すぐに履き替えないといけない訳でもない大きさの穴。

 


とはいえ、このままこれからも使うとなると大きく開きすぎた穴。

 


最近毎日パンツに穴が開く。

 


そういえば、昨日のパンツも開いたな。

 


私はまたつぶやいた。

 


まとめて同じタイミングでパンツを買うので、

 


ほぼ同じタイミングでパンツに穴が開く。

 


買いたてのころは何不自由なくパンツを所有する、パンツ富豪だったのに、

 


今となっては次々と散っていくパンツを見届けることしかできないパンツ貧民。

 


この穴はいつ開いたのか?

 


いまパンツを見た瞬間に開いたのか?

 


いやそれはない。履いている間に決まっている。

 


だが、履いている間はパンツの穴が開いていることは分からない。

 


パンツに穴が開いたという事実は、パンツを脱いで確認した瞬間に確定する。

 


つまりパンツを履いていて確認していない日常には

 


①パンツに穴が開いている

 


②パンツに穴は開いていない

 


この両方の状態が常に同時に存在していて

 


確認した瞬間にどちらかの状態に確定する。

 


シュレディンガーの猫という表現はもう古いから

 


まさはるのパンツという表現にしよう。

 


私はまたつぶやいた。

 

 

 

直径4センチの穴。

 


捨てるほどでもないが、履き続けるのはどうかと思う。

 


そんな穴。

 


確認しなければずっと①と②の状態を保ちながら

 


ずっと履き続けられたのに

 


確認してしまったことで①に確定した

 


だからきっと私に問題があって

 


パンツには罪はないのだろう。

 


それなのに

 


たったこれしきの穴くらいで

 


捨てるとか、

 


あまりにも節操がない。

 


このまま履いて使おう。

 


ちょうどパンツの真ん中に穴が開いているから、

 


パンツを履いたままうんこできる

 


素晴らしい。

 


私はつぶやいた。

 


もうこれからは用を足すときに

 


パンツを脱ぐ必要がない。

 


私は1日に最低でも2回は用を足すから

 


仮に50年生きるとすると

 


36500回パンツを脱がなくていい(閏年は換算してません)

 


パンツを脱ぐのに2秒くらいかかるから

 


20時間くらいお得になる

 


素晴らしい。

 


なぜ今までパンツに穴を開けてなかったのか

 


これまでの人生の途方もない時間の無駄遣いに後悔した。

 


過去はやり直せない

 


そんな当たり前のことを

 


私たちは忘れているのかもしれない

 


そんな想いに浸りながら1日を終えて

 


夕方便意を背負いながらトイレに行き

 


パンツを脱がずに用を足してみた。

 


パンツの穴と

 


お尻の穴が

 


全然あってなくて

 


パンツの中うんこまみれになりました。

 

 

 

私はつぶやいた。

 


何やっているんだろう。