しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 8

 


「おうー!あんちゃんマルフクにおったやん!!」

 


はまちゃんの声はボリューム調整のつまみが壊れたラジオみたいなデカさだ。とりあえず僕のピンクジャケットではまちゃんも僕のことを思い出してくれたらしい。ぼくとはまちゃんの意外な関係性を知った東さんはかなりビビってしまった。

 


「お、おめえ、はまさんと知り合いだったのか!」

 


それならそうと早く言えとかなんとか言いながら冷や汗をかく東さん。とりあえず東さんのオラオラは治った。が、逆にこの西成ブリーチははまちゃんがどういう人なのか、どうして東さんがいきなり怒るのをやめてしまったのか、色々と分からなかった様だ。

 

西成ブリーチははまちゃんに向かって聞いた。


「おっさん、ヤクザなんやろ??こいつ、歌聞きたくないからって金払わんのや。なんとかしてくれ。」


それを聞いたはまちゃん。みるみるうちに顔が真っ赤になって、ぶち切れた。

 

「ヤクザヤクザって言うなや!!わしはカタギじゃーー!!カタギにヤクザって言うとヤクザが黙ってないでえ!」


はまちゃんがそう怒鳴った。

どうやら、結局のところみんなカタギらしい。その後はまちゃんも知り合いにいっぱいヤクザいるから呼んでやるからな!!みたいな脅しを始めだした。はまちゃん、オマエもか。

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はまちゃんが西成ブリーチの胸ぐらを掴んだり、どついたりしている。その姿を見ながら、僕は合間にローソンで酎ハイを買ってズズズと呑み、東さんははまちゃんと一緒になって「ほら!はまちゃん怒らせたらヤバいんやで!」みたいなことを言っている。カオスだ。

 


どっかから湧いて出たように警察官が来る。まぁまぁ、お二人とも辞めて下さい。なんて言われながらもはまちゃんは「わしはブタ箱いく覚悟は出来とるんやぁぁあ!!」とか言ってまだ懲りずにどつく。

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これいつ終わるんだ?と思ったが、とりあえず西成ブリーチがはまちゃんに謝って終了した。「おめえ気いつけや!ここは西成やで!」はまちゃんもそう言って、とりあえず満足したようだ。そこからなんだかんだみんなで仲良くなって、みんなでコンビニで酒を買って乾杯して飲んだ。

 


「そういや、お前はなんで西成におるんや??」

はまちゃんが西成ブリーチにそう聞いたら、西成ブリーチがここまでの生い立ちを喋りだした。

 


どうやらミナミでホストをしていたのだが、いつまでやっても売り上げは増えず、先輩にいじめられ、うだつが上がらないので這々の態でホストを辞めて西成に飛んできたらしい。確かに。こんな奴と金払って飲もうと思う奴はいないな。ホストでナンバーワンだったとか言ってるけど、嘘だな。ワースト1だな。

 


なんだかんだで通天閣の下ではまちゃん、東さん、西成ブリーチと僕でそれから5.6時間は飲み交わした。

観光客が明らかにキチガイがいる、みたいな目で見てくる。完全にこの時は僕も西成の人間に溶け込んだようだ。全員酔っ払いすぎて酒を延々と買ってはみんなで飲み、みんなで転び、みんなでションベンをぶちまけた。はまちゃんの知り合いがたまに合流したりして、その度に西成ブリーチは態度が悪いからと殴られたりしてた。

 


楽しいひと時を過ごし、さてそろそろ帰って寝ますか。なんて思った時だった。

 

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観光地全開の通天閣付近に明らかに浮いた感じのレトロな映画館が。どうやらポルノ映画とかやってるみたいだ。

「ここの映画館は面白いから、ぜひ行っとけよ。まっちゃん。」

ニヤニヤしたはまちゃんにそう言われ、期待を胸に僕は彼らと別れを告げた。また、何処かできっと会えるよね。

 


ナイトタイムは800円です。

 


と受付で言われ、金を払い、地下へ。

もう上映しているのだろう。中は真っ暗で、スクリーンの微かな光だけでなんとか歩いた。

 


普通の映画館よりも少し小さいくらいの規模だ。ただ内装はなかなかにボロい。そして変わったことに、何故だか来てる客はあんまり、映画をまともに観ていない。中には寝ちゃってる人もいる。なんか、不思議な場所だ。そう思ってぼんやりと周りを見渡していたときだった。

 


「あ♡あ♡あっ♡」

 


明らかに、いやらしい声が聞こえてくる。しかもそれは上映されているポルノ映画ではなく、どうやら客席から聞こえてくるのだ!なんてこった!

 


喘ぎ声を頼りに上映室の暗闇を、声のする方に歩いた。すると上半身裸体の女が椅子の上で露わな姿になっていて、隣にいる男がこれでもかってくらい乳首をペロンペロンと舐めている。

そしてその周りには4、5人のおっさんが立っていて、それぞれが己のペニスを手でさすっている。もうAVの世界だな。

 


面白がって近ずいてみると、激しくペロッペロしているおっさんが顔を上げてこっちを向いた。その眼差しで言おうとしているのはこうだ。

 

『俺は激しく舌を上下させていたから疲れている。お前が代われ。』

 

というアイコンタクトを僕に向けてきたので、僕も、

 

『あなたの為ならなんなりと御押しつけください兄弟。』

 

みたいなアイコンタクトで返しておいた。

 


これなんてことわざかなぁ?

棚からぼた餅?そんな感じかなぁ?

ウヘヘヘ。なんて思いながらペロっペロしてみると、

 

また相手が感じて「あ♡あ♡あっ♡」ってが喘ぎだした。

 

 

 

ん?

 

 

 

 

 

 

男??

 

 

 

 

 

 

男!???

 

 

 

マジかよ!!

 

 

 

僕がバトンパスされてペロッペロしていたのは暗闇で紛れていた女装した男だった。気色わるくて思わず、バシィィ!ってぶっ叩いたら「あああぁあん♡」って声出してた。もうモロに男の声。そりゃそうだ。男なんだから。

 


その瞬間、この場所の真実がわかった。そう、ここの映画館はいわゆる、「ハッテン場」だったのだ。同性愛者達が世界に断絶されながらも、僅かながらに共通の認識の同性が集まり、快楽を享受するエデンの園なのだ。

 


そんなことも知らずに僕は棚からぼた餅とばかりにペロッペロしたもんだから、アホにも程がある。

 


とりあえず心を落ち着かせるために喫煙所に行ってタバコ吸ってたらさっき僕にペロッペロされてた男が横にきてタバコ吸い出したんだけど、もうね、完全なるおっさん。普通に顎ヒゲ青いし。体毛すごいし。首吊りたいわ。

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完全に酔いも覚めてしまい、僕は映画館、いや、ハッテン場を出てドヤに帰った。好奇心の向くままになんでも挑戦するなんてもう言わない!そう胸に誓いながら、枕を濡らして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

つづく