しらぼ、

松本真青がSFを書くとこうなる。

正月企画!青春18きっぷ一人旅 熊本〜大阪 4

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23時33分。

涙を流しながら見える車窓からの景色は、漆黒の闇だけだったが、車内のアナウンスで流れた「広島」というワードが僕の心に小さなともしびを滾らせた。次第に漆黒の中に点々と灯りが見え始め、車両はホームに流れ着いた。広島だ。

 


閑散としたホームを抜け、外へ。風が冷たく頬を叩く。広島駅周辺はオフィス街となっており、チェーン店の居酒屋やコンビニなど、面白味に欠けた街並みで、人もまばらにしか歩いていなかった。

 


よし、ここは過去の戦争の悲惨さ、核原発の恐ろしさをメディアではなくこの目で、更には五感で感じとろうではないか!いざ参らん!原爆ドーム

 


とは微塵も考えずに「広島 風俗」でGoogleマップで検索。でるわでるわ風俗店がゾクゾクと。どうやらこの周辺が賑わっているらしい。

 


ちなみに、日本中旅するときは、この「〇〇 風俗」でググるとだいたいディープな街に行けるので是非。

 


駅前でタクシーを捕まえ、乗り込んで一言「風俗!!!」って言ったもんだからタクシーのおっさんも、うわ、キチガイ乗せてしまったわ、みたいな目でミラー越しに僕を見つめていた。

 


ふぅ、というため息というか諦めた声で「じゃあ、薬研堀の方だね。」とおっさんは呟き、アクセルを踏んだ。

 


10分程タクシーに揺られたところでタクシーはギラギラとした繁華街の中で停まった。

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ふむふむ、ここが薬研堀ですか、と辺りを眺めていると腹が減ってきた。そういえば今日おっとっととおでんしか食べてないな、とりあえず、せっかく広島だからお好み焼きでも食おう。

 


ふらふらを薬研堀を徘徊して一軒の小汚いお好み焼き屋を見つけた。青いひさしに赤ちょうちん。決まりだ。引き戸をガラッ、と開けた。

 

 

 

中にはおっさんが5人おばさんが1人、それとお店の主人のおっさんという面子だった。

 


へいらっしゃい!

 


みたいな勢いはなくて、軽くヨボっとした主人のおっさんがこんばんは、と挨拶してきた。拍子抜け。

 


あ、どうも。

 


カウンターの席に座る。ビールを頼むとまたヨボっとした瓶ビールとグラスが出てきた。うん、ぬるい。でもこれがまた、乙なんだなぁ。

 


とりあえず、お好み焼きと、そこのおでんください。

 


お好み焼きを焼くのもどうせトロいと踏んだ僕は、空腹に耐えかねて速攻で出てくるであろう湯気の立ち昇るおでんの鍋を指した。

 


はいはい、ちょっと待っててくださいね。

 


恐ろしく標準語の店主のおっさんがそそくさとプレートに火をつけ、タネを仕込む。おい、ちょっと待て。おでんはどうした。

 


20分ほどビールをちびちびと傾けながらようやく焼き上がったお好み焼きが僕の面前に出てきた。どうやらおでんは忘れてしまったようだ。

 


一口食べる。うん、ぬるい。

 


そんなぬるめの店主のおっさんと対比する様に、カウンターに座るおっさんは会話がヒートアップしていた。

 


「でよぅ、紳助のやつがよぅ。」

 


酩酊して顔を赤くしたおっさんが先ほどから紳助紳助と、紳助との過去話に花を咲かせていた。他のおっさん共はうんうん、と半ば聞いているフリをしながら、またか、みたいな顔をしていた。そんな周りの雰囲気を察したのだろうか、黙るわけではなく、いきなり僕に絡んできた。

 


「紳助、じゃねえ、おめえさんはどこからきたんだい??」

 


「あ、僕は旅行で来ました。お好み焼き食べたくて。」

 

 

 

「え?こんな汚え店に!?」

 


これには周りのおっさんも皆含めて、こいつキチガイだな!!みたいな顔をされたけど、もう慣れた。

 


それからは広島の地元愛と紳助と時々やしきたかじんの話をループさせながら、僕はお好み焼きをボソボソと口にしながら、おでんはこのまま忘れてもらって帰ろうか、などと逡巡としていた。

 


紳助が釣りで大物を釣った話が3周目を迎えた時、僕は店主のおっさんにお会計を告げた。

 


はい、少し待っててくださいね。

 


また、トロい動きで店主がそそくさ呟く。会計の紙でも出すのかな?と思いきや、大根、卵、白滝の3種のおでんが出てきた。

 

 

 

こいつ、覚えていやがったか。

 

 

 

僕は飲み込むようにおでんを流し込むと、会計を済ませ、そそくさと店の戸を開けた。背後からは3回目のたかじんが生きていた頃の夜遊び事情を語るおっさんの声が響いていた。ちなみに、おでんもぬるかった。

 

 

 

1時間程過ごしたのだろうか。深夜の薬研堀は気温がグッと下がり、足の裏から冷気がゾクゾクと上がってくる。それを振り払うようにして僕はまたブラブラと歩きだした。

 


キャバクラ、キャバクラ、ホスト、キャバクラ。その間をひしめくキャッチの男達。

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おっぱいはいかがですか?ヌキですか?そんな中をシカトして通り過ぎる。けど内心はめちゃくちゃ興奮していた。

 


行く当てもなく彷徨い、疲れたのでコンビニでチューハイを買い、公園の片隅に座る。新年会の後みたいな社会人がワイワイと騒いでいたり、明らかにフェラしてるだろってくらいの体勢てしゃがむ女と男のカップルがいた。散らかったタバコの吸殻。なんとも節操のない街だ。そろそろ寝るか。そんな時だった。

 


「おにいさーん。おにいさーん。」

 


若者が声をかけてきた。キャッチとはちがう声色だったのか、無意識に返事をすると、ツーブロックカリアゲヤンキーの二人組が近寄ってきて話しかけてきた。

 


「おにいさーん、やっぱり喧嘩しにきてるんですか?」

 


は?一瞬意味がわからず思考が止まった。とりあえず、こいつキチガイだな!みたいな目で見てやった。もう1人のキンパツロンゲスウェット(キティちゃんの健康サンダル)が言った。

 


「ぼくたち、喧嘩したいんっすよ!だったら、やっぱりここですよね!」

 

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キチガイ二人組の話を聞くと、どうやらここの公園は昔、喧嘩上等な暴走族やらヤンキーやらのキチガイが集まっては、この広場の真ん中で日々喧嘩を繰り返していた場所らしい。そこで、正月早々キチガイなこの二人組は、酒の力を借りて、いざこの公園に来たものの、いまとなってはパリピ社会人とフェラチオの溜まり場と化していたのだ。

 


「いや、よくわからないね。」

 


一切の感情を消したような声でそう言い返し、僕は立ち上がった。どうですか?僕とタイマンはりませんか?と言われたが、無視した。僕もキチガイだが、こいつらもキチガイだな!正月はこういう訳の分からない奴らが湧いて出るらしい。その場に居ても変な雰囲気になるので、公園を後にした。

 


欲望の渦巻く広島の街、薬研堀。そこにはたくさんのキチガイ共が様々な想いを馳せ、いまとなっても彷徨っているのであろう。

 

 

 

どうせなら、フェラチオ最後まで観たかった。