しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

世の中は複雑である。


世の中というのはいつも複雑である。

社会、ビジネス、宗教、恋愛etc…
1つも単純なものなどない。
国と国とが戦争したり、カップルがケンカするのも何かと何かという異質なものがぶつかりあうからである。
そして異質という中でも相対的というものがある。
これはちょっと彼氏とはセックスに対する考えがあわないのよねとか母親の味噌汁の味を再現しろよとかの次元を超えて極端に相反するもののことである。

でもその相反するものごとが存在することによって一方が認められたり、高く評価されることもあったりするから相対的なものも必要だよねということを※相対主義というのだけれど、今回はそんなお話。
相対主義(そうたいしゅぎ、英:relativism、独:Relativismus、仏:relativisme)は、経験ないし文化の構成要素やそれに対する物の見方が、その他の複数の要素や見方と相対的関係(is relative to)すなわち依存関係(is dependent on)にあるという考え方である。(Wikipedia引用)


さて時は遡ること数ヶ月前のこと。
僕は普段イベントとか合コンとかいった、ある程度作られた場面というところに行くのが結構苦手なのだけれど、
ふとしたきっかけで女友達Dちゃんから、合コンを開くから友達呼んでくださいなっていう頼みが入ってきたわけです。何人呼んだらいいのと聞いたらあと2人だと言われたんですね。女の子の方はその女友達Dちゃん本人は来なくて別の子の合コンをセッティング頼まれたんだとか。
じゃあ分かりましたよときびだんご片手にキジとか猿とか集めていく訳にはいかないんでケータイを取り出し、アドレス帳を開いてみる。
さて誰を呼ぼうかなと思ってスクロールしてみたんですね。3人とかなら
いのちをだいじに
めいれいさせろ
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とかで行くだろうなぁとか思った自分がキモいなぁとか思った
で、ここで2人ということはもう僕ちゃんは確定なんであと1人呼ぶ感じでいこうとなりました。で、ここで誰を呼ぶかというところですが、はい!ここで出ました。相対的な人を呼ぶわけです。つまりもっと柔らかい説明をするともう1人をブッッサイクぅぅうぅゔわぁ!みたいな人を呼ぶことで相対的な関係性になって僕の方が余計に良い人に見えてしまう様に仕向けるんですよ。わはは
このテクは実はよく使われていて、特に男子より女子の方が多く使ってて、だいたい可愛い子とブサい子が2人でプリクラとか撮るのはそういう相対的な関係性をよく理解しているからです。世の中は複雑である。
で、合コン呼ぶと鼻息荒くなるような、でも場の雰囲気は盛り上げてくれる、顔がイマイチでダライ・ラマみたいな友達M君がいるんだけど、このM君苗字が僕と同じ松本なんだよね。同じ松本って苗字だから尚更対比されて僕が良い人に見えてしまうわけですよ。さてじゃあこいつを呼んでしまおうかとなる訳です。ぶはは

で、松本君を召喚しようと思って、アドレス帳見るんですけど、改めてみてみるとなかなか面白いもんで、当たり前の話なんだけど、あいうえお順なんですよ。同じ苗字の人とかいると連続で
田中
田中
とか出ちゃうわけです当たり前だけど
で、僕の名前が松本なんですけど
松本が5件あったんですね。
で1人が僕の番号とかアドレスで、残り4人いたんですね。
松本○美
松本
松本
松本ひかり
このアドレス帳に登録する時点で何を焦ってたのか知らないけど松本とか斎藤とかその辺の空気中漂ってるレベルにポピュラーな名前はフルネームで登録しておかないと絶対後から分からないんだよね。世の中は複雑である。
ちゃんと焦らないでフルネーム欲しかった。これ2人どっちか分からないじゃん。○美ちゃんとひかりちゃんは女の子だからこの松本の2人のどっちかが俺が召喚しようとしている松本なんだよね。
昔は携帯電話とかなくて1人1人電話番号覚えたりするから番号見たらわかるんだけど、今は番号覚える必要もないから当然覚えてないわけです。じゃあどうすればいいのか。
安心して下さい。
単純なことです。2つとも電話してしまえばいい。
とりあえず1つ目の松本に電話します。プルルルルっと鳴ってすぐ出ました。男です。
「あっ、もしもし?」
いやぁしばらく会ってもないし、電話もしてないから声を聴いても松本君の声なのか全然分からないんです。だからこれは特徴を聞いて確認するしかない。
「えっと、顔がイマイチで合コン呼ぶと鼻息荒くなる松本君で合ってるよね?」
と、的確な質問をします。
的を得るとはよくいったものですね。的中ですよ。相手は怒りを露わにして電話をガチャリと切るわけです。つまりこれは違う松本です。よしこれで、もう1つのアドレスの松本君こそが、僕の召喚したい松本君だと確定したわけです。
早速、もう1つの松本君に電話します。
プルルルル
プルルルル
プルルルル

一向に電話が繋がりません。あれ?どうしたのかなと思って待ってみたのですが、繋がりません。
じゃあ仕方ないからメッセージを入れておこうと思って、松本君に合コンの日程と場所を書いて送ります。しばらくすると、「了解~!」とメッセージが。
さてこれで僕のモテマクリ合コンが準備出来たわけです。

相対主義よありがとう。




さて当日です。
僕は意気揚々と合コンの待ち合わせ場所に行き、到着です。
3対3の合コンにだったのですが、女友達が誘った男が急遽ドタキャンをしたわけです。つまり男2人の女3人です。僕とダライ・ラマ、もはや僕の勝ちですよ。
さて女はどんなのが来るのかな、麻美ゆまみたいなのが3人来たらいいなぁと期待する訳です。今回の合コンは
アサミ・ユマ
という感じですな!最後の1人は帰国子女かなにかだろう。

しばらくするとケータイにメッセージが。
「着きました。」
松本君からのメッセージでした。ケータイ画面から顔を上げて前を見るとそこには、
ダライ・ラマとは程遠い爽やかイケメンくんがいるではないですか!
どのくらい爽やかかというと揚げた唐揚げのままが普通だとすれば彼はクッキングシートで余分な脂を落としきった上におろしポン酢を添えたような爽やかさなのです!
そこで僕はふと気付いたのです。
これ友達の違う松本だったな!と。
しかも彼は外面だけでなく高学歴であって、どこでどう間違ったのかかっこいいほうの松本君を呼んでしまったのでした。
完全に逆手を取られたわけです。アベレージな唐揚げと爽やかポン酢おろし唐揚げとか相対的に並んだ時、僕に箸がのびることなどありえないのです。

まぁ人数余ってるからそれでもどうにかなるだろなって俯瞰して考えていると、女子3人がやってきました。

3人ともダライ・ラマみたいな顔でした。
絶対絶対あれは麻美ゆまじゃない。
そしてイケメンくんと僕の方を見てテンションあがったのか3人とも
みたいな感じで鼻息荒くしてた。






ちなみに、後日本当にダライ・ラマみたいな松本君の連絡先探したら
松本光と書いて まつもとひかる
だった。あぁ。これ男だったのか。
世の中は複雑である

おもむろに。



おもむろ

という言葉が最近キテいる。
とにかく熱い。

どのくらい熱いのかというと、twitterの検索の話題の言葉になっていないし、他メディアでも騒がれていないし、そもそもおもむろという言葉を使う人が少ない。

僕と同居人のY氏の中でキテいるのである。つまりただのマイブームがマイルームの中で巻き起こっているのである。

じゃあ熱くないじゃないかと言われてしまえばそこまでだが、僕の人生観の中で今、確かに、キテいるのがこの、おもむろなのである。

日常生活の中でどのくらいの人が果たしておもむろにという言葉を使ってるだろう。

さてここで面白い問題を1つ。


「おもむろ」とはどんな意味でしょう?








おそらくこのshiraboの読者の皆さんなら、不意に、とか突然、とかの意味を想像したのかなと思うのだけれど、実はハズレです。





正解は、動作が静かでゆっくりとしている様。なんですね。

あら不思議。

そんな使い方だったなんて!

みんな知らなかっただろうなと思うと鼻の奥がムズムズするくらいざまあみろってくらい痛快なのだけれど、

実は今回僕もマイブームになって乱用してる頃に改めて意味を調べて自分が使い方を間違っている事に気付いてしまったのである。

だから酒は百薬の長の長を「おさ」と呼んでたY氏の過去をdisる資格は僕にもないのである。


実はこのおもむろ、もっと掘り下げてみると、実に面白い。(福山雅治風)

実は高年層の人は皆、おもむろという意味をゆっくりという正しい意味で知っていて、年代が若くなる程に、間違った「突然」とか「不意に」という間違った意味で使っているのである。

それがどうした。
全然面白くなんかないやい。

なんて思っている人は今すぐこんな記事読んでないでXVIDEOとかFC動画とか観て自分のポインセチアでも触ってなさい。
悪いものに取り憑かれてるから。


話を戻すけど、じゃあどうしておもむろという言葉が若い世代で間違った使われ方をしてきたのかというと、確たるものは特にないらしい。なんとなくそういう風潮で、そうなったのだと。

だからここからは憶測なのだけれど、


おもむろというのはすごいステータス的なものがまずあるのが前提である。おっさんとかではダメでおじいさん、それもかなりヨボなおじいさんがヨボヨボしながら床の間の引き出しから取り出した木箱なんかがおもむろにふさわしい。しかし、核家族化の進んだ現代ではなかなかそういった場面に出くわすことがない。だからおもむろという言葉自体使われなくなった。という説


2つ目に、おもむろという言葉の意味がゆっくりと動いている様の意味なのだけれど、現代社会において、ゆっくりなものが無くなってしまっているからではないだろうか。googleで調べればなんでも数秒で分かるし、飛行機や新幹線で短時間で移動できるし、レトルトですぐに食べれる時代になった。そんなときに、ゆっくりと時間をかけた動きという言葉の表現を自然と使わなくなったのではないだろうか。という説。

最後に、おもむろに出てくる物の付加価値がある場合が多いから。という説。これが僕の中では最有力で、おもむろに出てくるのにふさわしいものとして、だいたいヨボなおじいさんが取り出した木箱の中には、姿をくらませることができる依存性の高い指輪とか、その昔マッカーサーが飲んでいた薬だとか予想を超えるものが突然出てくる。そう。おもむろに、だ。だからこそ、急にとか、不意に、といった意味合いが若者の間では印象に残ってしまうのだろう。



日本語の良いところは、それが間違っていた使い方だとしても、一般的に広まっていて、それが伝われば問題なく使える、という許容範囲の広さである。たとえば、「役不足」「募金」「汚名返上」など実は間違って使われているのだけれどそれでも意味は相手に伝わる。時代と共に形を変えていく日本語の文化は新しいものをどんどん取り入れていく日本人特有の文化なのである。



さあここまで追求してくると余計に「おもむろに」を使いたくなってきた。だがいざ使おうと思ってもなかなか上手く使えない。そこれやっぱり話の展開とか背景とかいろんなファンタジーとかマッカーサーとか重なって初めて気持ちよく使える言葉なのだろうと思う。よし、思い切り気持ちいいおもむろにを使ってみようと思う。




ーーーーーーーーーーーーーーー




人通りの少ない夜道を1人歩く○美。

普段は母親に、
夜道は危険だから歩いてはいけないのよ。

と固く注意されていたのだけれど、今夜はつい遅くまで呑んでしまったせいでいつもはまだ人通りの多いこの道も、すっかり人通りが無くなってしまっていた。

並びにある不味そうなラーメン屋も、マッカーサーが使ってた薬とか売ってる胡散臭過ぎる薬局も、軒並みシャッターを閉じてその静寂を守っていた。

電灯のない中でも不思議と歩けてしまう夜道。

そう、今宵は満月。


満月がこの静寂なひんやりとした道を照らす唯一の街灯だった。

夜道を転ばないように、物にぶつからないように歩くにはこの街灯の明かりで十分だった。

だけど○美は怖かった。

そう、この満月が呼び起こす本当の恐怖を知っていたからだ。

それはオオカミ男みたいな童話の世界ではない。

いや、むしろもっと恐ろしいものだ。

欲望という棒に突き動かされた男が深夜、満月の光に導かれて路上に現れるということを。

そして○美の恐るべきことが、起きてしまった。

○美の歩く先の方から満月に照らさた男が1人歩いてくる。

それは○美の背後の方へ続く道を目指しているのではなく、○美という1人の女の子に向かっているということが、○美にも理解できていた。

そして本当にこれは恐ろしいことなのだが、そのときになっても○美は叫び声を上げて助けを求めることも、後ろに向かって走り出すことも出来ないのだ。

恐怖がいつの間にか、満月の光で作りだした○美自身の影が、○美の足首を掴んでそこから身体を縛り付けているような、そんな感覚だった。

夢の中でもがいて、でも上手く身体が動かせない、そんな感覚だった。

男が目の前に来た。

男はもう何かを得たかのような満足気な表情をしていた。

そのまま男の手が男の履いているズボンのファスナーにのびる。




ジーッ。



ファスナーが開く。○美はその瞬間も、逃げ出すことも視線を背けることも出来ずに、ただただ男を見ることしかできなかった。


男がズボンの中に手を入れる。

ファスナーの中から満月に照らされて恍惚と光るポインセチアが出てきた。おもむろに。





ーーーーーーーーーーーーーーー


あぁ!これ完璧じゃん!
すっげーおもむろ。マジおもだね。



目が覚めると密室でした。ファイナル


前回のあらすじ。




ある朝、目が覚めると
脱出不可能の部屋に幽閉された私。
食料問題から転職まで悩んだあげくの果てに、襲いかかるのは帝国主義のてっぺんに君臨するジェイソンの存在だった。



彼は独裁政治の政治を行い庶民を苦しめる。

そんな中、自由を求めて民衆が立ち上がった。絶対絶命の私が空を眺めて気づいたこととは....。














私の部屋の扉は一つしか無い。

そこを通らない限りは玄関へ、トイレへ
行くことは出来ない。


しかし、方法は別にあったのだ。


自由を求めて眺めたこの窓こそ
もう一つの脱出場所なのだ








空しいという漢字を作った人は
窓から出ることを知らなかったのかもしれない。自由の象徴である空こそ私の自由への鍵なのだ。




また窓を開ける。



風がドアノブの無い部屋に入ってくる


まるでここが本当の出入り口なのだと私に語りかけているように

私の耳元で小さくぴゅううと唸る。


起きたときよりもだいぶ明るくなっている。


この日の出の時間帯の空が特に私は好きで
奇麗な空をみるといい一日になる予感がする。だが、下を眺めるとその予感も不安に変わる。



残念なことに私の部屋は三階なので
5メートルほどの高所なのだ。

残念ながらドアノブが外れた時に備えて、この高さから飛び降りて受け身をとる練習を私はしていない。




それに着地の瞬間にジェイソンがついに姿を見せるかもしれない
そうなってしまえば私はもう帝国主義の犬である








どうしようか...



と考え考え
はっと思い出す。



入居日にデカくて邪魔で私をイライラさせた避難はしごが部屋にあるのだ

ドアノブ開かないのは立派な避難だろう。
ドアノブ地震雷火事親父







 
クローゼットをあけ、O型の血液型通りの
素直に散らかった荷物を蹴散らし
デカい避難はしごを取り出した
あんなに邪魔でイライラした避難はしごが
キラキラと黄金色に光って見えるのはなぜだろう。宝箱にみえてしょうがない

早速蓋を開ける

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中にはアルミ製の避難はしごと
簡易の説明書があった。

この避難はしご、エスカーラという名前だった
私の心境としてはエスカーラさん、いやエスカーラ様である。
この帝国主義の世界から私を連れ出してくれるのは
エスカーラ様なのだから。
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時間がない。いつの時代も
革命が起きるときに鍵を握るのは時間だ
遅ければ私は犬になり、間に合えば自由が手に入るのだ。



エスカーラを窓の手摺にかけ、ロックピンをはずすと



エスカーラはけたたましい金属音を立てながら地上へおりていった
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近所迷惑にもほどがある

朝6時過ぎにこの金属音である

ドアノブが外れて避難はしごをおろし
脱出を試みるマンションの住民などこの世にいるのだろうか










私だ!!!!













手摺から身を乗り出し、外へ
冷たい風が容赦なく私の手の感覚を奪いさっていく



自由をつかむというのはこんなにも大変なことなのか


と、また少し大人になれたきがした





それにしても起きてすぐに外を観たときは
背中に翼が生えて飛び出したいなんて
言っていたけれどあながち本当になってしまったのだから



人生とは本当にどうなるのか分からないものである。



すべてがおわったら
レッドブル片手にケバブ食べてやる










ぎしりぎしりとアルミ製のエスカーラは私が降りていく度に軋んだ音を出す。

大丈夫なのかこいつ
身体の揺れにあわせてエスカーラも揺れる。


窓の並びも同じなので階下の住居の窓に
エスカーラが遠慮なくぶつかる
避難はしごじゃあない。
非難はしごである。あぁ上手いこと言った。



ああこんな姿観られたら恥ずかしくて生きていけない
そうなったときはエスカーラと一緒に
遠い遠い外国の僻地に姿をくらまそう
そうだアフリカにいこう
きっとドアが無いからドアノブもない









そのときだった
決して起きてはいけない事態が発生した






マンションの隣の住居に住んでいるおばさんが朝のゴミ出しのために表に出てきたのである!!

歩くたびに両手に掴んでいるビニル袋が

ガサリ

ガサリ

と何とも不吉な音をたてている


脱獄中に看守が通り過ぎ行く感覚だろう。
マイケーーーール!!と無性に叫びたくなった


 




頼む!!気づかないでくれえええええ



心臓の音まで消したつもりだったが
エスカーラがしくじったのである。


私が動きを止めても波打つので
惰力でカチャンカチャンと鳴ったのだ
エスカーラ!!くそやろううう



おばさんがピタリと歩みを止め、



気づいた!!





人間は感情でどうしてあれだけ顔を変えることが出来るのだろうか

これでもかと言うくらい目を見開き

口をあんぐりとあけて
無言でこちらを見ている



鳩が豆鉄砲をくらったような顔という表現があるが
そんな生易しいものではない。RPG7




おばさんの両の手に掴まれたビニル袋が重力のままに、ドサリ、ガサリと地面に落ちる











漏らしたかもしれない





いや、大丈夫だ。ジェイソンはまだ出ていない





齢21歳、松本真青。大人になるって
こんなに大変なことなんだと学んだ。
思い知った。



上京するのは大変だと周りに言われ
それでも何か、そう、希望を求めてきたけれど、こんなに大変だとは思わなかった。


どうするこの局面!!
生き残れ!!
冷静になろう。


この場合、先に冷静になった方の勝ちだ
先手をとれ!真青!




頭の中で軍師諸葛亮孔明が囁いた気がした。
まずはいかにも普通の人を演じるべきだ
自由を求める帝国主義の民衆ではなく
泥棒に入ろうとしている人でもない。
笹塚のごく普通の市民だ。
全神経をフル活動させて
声帯を震わせ、第一声を放った
















おはようございまぁす~







駄目だ。びくともしない。
おばさんは不動のまま
RPG7を私に向けている。

何故だ!?平凡かつ善良な都民なら
朝の挨拶をするはずなのだが
何故だ!?
そうか、表情か?顔が笑っていないからか?
違う!決定的に違う!
不信感だ!月曜の朝方に
マンションの三階から
梯子でぶら下がっている人は
どうやら普通ではないのかもしれない

泥棒の類いと思われたら一番マズい
ここでおまわりさんのお世話になんかなりたくない

熊本の母にそんな知らせが届けば
母は悲しみに暮れるだろう親不孝だ



そこをまずは叩くしか無い
次の一手を発した。

















泥棒じゃないですよお~








これで安心だろう。
本物の泥棒もきっと泥棒じゃないと主張するだろうが、私は本当に泥棒じゃない。ハートだ。小細工はいらない



本当の大局は戦とおなじである
武力ではない。心理戦だ。



おばさんに動きが見られた。
はぁ..。
と一言声を漏らした後、
RPG7の銃口を避けたのである。


普通のおばさんに戻った。
ゴミ袋を握り直し、捨てにはいかずに
また家に帰っていった







ふううう。
安堵する。
また誰かが来ても堪らないので
さっさとエスカーラを降りきった。










自由である。自由を勝ち取ったのだ、この手で。
振り返ると共に戦ったエスカーラが風で少しだけ
カランカランと音を立てた。
少し寂しそうに見えた。

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おわり。

目が覚めると密室でした。後編



前回のあらすじ。

とんでとんでとんで

気持ちよい朝に突然現れた恐怖

回らないドアノブを前に

諸葛亮孔明がケバブを削ぎ落としていくのだけれど

さいごはドアノブが外れてしまい
私の脳内を北風が吹き荒れていくのでした。










冗談じゃない
なにが孔明
なにが感謝だ
なにがウソップだ
おいこのドアノブ!
FXXK!!!!




Italyとか書いてあるけど本当か?
中国製だろ


これじゃあもう完全密室じゃないか
金田一とかくるの?眼鏡の子供も?
時計をみるとすでに6時をすぎている




おわったー






仕事に行けないではないか


それよりなんと言って休みをとれば良いのだろうか



すいません。
部屋から出れないので休みます。




いやあ、駄目だろう。
ものすごく駄目な気がする



知人に生きる力の極めて乏しいやつがいるのだが彼が仕事に行かないときのキメ台詞を思い出した






すいません。
ドアノブがはずれちゃって。





正直なことはいいことだと小学生のころ
習ったけれども今回は違うと思う。




とりあえず体調不良を訴えて
どうにかこうにか仕事の件は流した
さてどうしたものか
このまま出れなくなると様々な問題が生じてくる








まずは食料問題。
冷蔵庫をあけてみる
ワインが二本
お茶
胡麻ドレ
醤油
珈琲豆
飲み物と調味料しかない
なんて生活感ないんだ




非常事態にそなえて乾パンとか置いとけばよかった
ドアノブが外れちゃうことくらい想像できなかったのだろうか
想像力の乏しさを思い知る。





次に仕事の問題。


いままでの建築業から
完全に自宅に引き蘢ってできる仕事に
転職しなければならない



なにをしようか
内職でプラスチックのお花を延々と作ろうか







ドアノブとか内職で作りたいな。






親にも顔向けできないな



うちの息子は上京して引きこもりになりました
むかしは元気な子だったんです



とか言わせたら親不孝だな本当

精神的なものの見え方というのは
本当に不思議なもので
最高の気分のときに見上げる空は大好きなのに


いまこうやって窓から眺めると
なんとも言い難い
自由な空と対照的な今の私をよけいに思い知るだけで虚しくなる。




そういえば 虚しい は 空しい とも書く
きっと漢字を作る人もドアノブ外れたのであろう。




と、ここで大変なことに気づいた。
人間に必要不可欠な活動の一つに


排泄



があるのだがそこに問題が生じた。
分かりやすく説明するために
我が邸宅の間取り図『THEまどり』を書いてみた
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すこし見えずらいが
このような造りである。



この時点で皆さんもお気づきかもしれないが



そう。トイレにいけないのである。




人間とは不思議である。
叶わない物事や手に入らないものだと
叶えたくなるし手に入れたくなる

タバコが吸えない場所にいると
余計に吸いたくなり

今日はお酒は控えてくださいと病院で言われると
呑みたくなる

そして例を違わず今回は
トイレに行けないと分かると
急にトイレにいきたくなった

まだ百歩譲って小便なら
お風呂場で済ませられるだろうが
今回は大である。


本当に私の身体は私に残酷だ
便意という名の帝国主義の奴隷になった気分だ
もちろんその王者は、、
※せっかくこのブログを読んでいただいてるので
食事中の方もおられるかもしれないので
下品な言葉はさけよう









そう。ジェイソンだ
ジェイソンが私の下腹部で馬車にのり
馬にひたすら鞭打っているに違いない
この勢いはヤバい
駿馬に乗っているなジェイソン





だけれどもいくら帝国主義の閉鎖的な国家でも
私は私である。
人間としての尊厳がある。



とてもじゃないがビニル袋等の応用で仮設便所は嫌である




ジェイソンの思う通りにはいかせないのだ
いつだって歴史を創り変えていくのは国民であり庶民である



私たちは負けない!さあみんな!戦おう!
そう胸に誓い拳を高くあげると
よけいおなか痛くなった
こんなことしている場合じゃない
こんな時にどうすれば良いのか
そう。心を無にするのである。

雑念を捨て心を無に。
ドアノブもジェイソンも
ケバブと一緒に削り取っていく。



よし。これでいい。




様々な雑念や欲求が人類を進歩させ新たな技術を生み
快適な生活が出来るのだが


時にそれらは行動を抑制し、自由を奪う。
確かに出れないが、仕事も休んだし
時間も自由に使えるし良いじゃないか






そうだ。ドアノブが無いから外に出たいだけで
ドアノブがあれば案外出たいとも思わなかっただろう










いやあ駄目だ
私には駿馬に鞭打つジェイソンがいた
いくら無になってもその白い道を
ジェイソンが駆け抜けていく。



本当にトイレにいきたい
せめてほかのドアノブがとれればよかったのに




玄関開かなくてもトイレが使えればそれだけでも良いのに




自由になりたい
そう思って自由の象徴である空を眺めたら
ふとひらめいた













そうだ。
窓は開いている。




つづく!!

目が覚めると密室でした。前編 過去記事




これは嘘のような本当の話である。






最近、酒をのむと記憶がとんでしまう。

どうにかこうにか器用に
家まで帰ってきているのだけれど
記憶が曖昧なのである。



おそらく帰りはしっかりしているのだけれど寝ると忘れるのかもしれない。

渡り鳥がなんとなく何万キロと飛んだり
シャケが命がけでなんとなく激流をのぼったり、それとなんとなく似ている。



人間の生き方なんて惰性だ

心臓がなぜ動くのか

なぜ受験して就職してるのか

分かったふりをしているだけで
だれもわかっちゃいない。

ただ流れるままに本能のままに生きてる。

知ったかぶりがうまいことを
世の中は大人と呼んでいる気がする

前フリが長くなったので話をもどす。


前フリが長いと趣旨がつたわらないし
基本的に嫌われる。

小学校の遠足前に長々とスピーチしている校長は全児童の虚ろな目や疎ましげな視線の中でもスピーチをする。あのスピーチは誰に向かっているのだろう
晴天の云々、楽しく云々、学習の一環云々
児童だろうか保護者だろうか教員だろうか
いや、きっと校長自身に向けているのだろう

前フリが長くなったので話をもどす。








つまり

呑んで

呑んで


呑んで


とんで


とんで


とんで

朝の目覚ましで目が覚めた月曜の朝5時

洋服も昨夜着たまま寝ている

大きくのびをして

大きくあくびする

昨夜酔ったものの早く床に就いたので
寝起きも良いし二日酔いもない
最高の朝だ!!!!


good morning!!!!






布団を出ると部屋はひんやりと冷たいが
なにせ気分が良いのでそれさえも心地よい。

作業服に着替え顔を洗い
コンタクトをつけようとするとケースに入っていない。気づけばコンタクトもつけたまま寝ていたようである。

鏡でみると眼球にコンタクトがついている

まあそんなこともどうでもいい
なにせ気分が良いのだ
部屋のカーテンを開き、窓をあけた
すうっと冷たい外の空気が部屋の中に流れ込む

まるで風そのものも寒い外から暖かい部屋の中に入りたかったかのようだ


朝5時過ぎの東京の空はまだ薄暗い。




空をみるのは大好きだ




このまま背中に翼が生えて


この窓から飛びたっていけたら


なんと素敵なのだろう。



そんなことをぼんやりと思いながら
ふと時計をみると5時半になっている。



そろそろいかなければ
工具と安全帯をいれたリュックをからって(背負って)




部屋をで、





























出れない!!!!!!!








ドアノブをまわしてもドアのロックが動かずドアノブだけが空回りしてしまう。

回らない!!!

ななななんてこった!

齢21になったけれども
こんな試練は初である。



まだまだ若いからだろうか
年を重ねて経験をつめばどんな困難にも
焦ることなどないのだろうか
ドアノブの一つや二つ回らなくても
鼻でふふんと笑ってしまえるのだろうか


そう思って鼻でふふんと笑おうとしたが
衝撃的すぎて鼻がひきつってしまう

ああ。私は未熟者だ。


とりあえず仕事に行かないとまずいので
なんどもなんどもドアノブをまわしまくる。

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ひらけ!






ひらけ!






ひらけ!
いいやこれじゃ駄目だ。
と、いったん手をとめる
何事も焦りは禁物だと昔からいうではないか。

まえに読んだ吉川◯治の三国志
スーパースター諸葛亮孔明だって
常に冷静を保っていた

何のために常日頃読書しているのだ
本から得た知識はいかさねばならんぞと
自分を叱咤した。


お願いします開いてくださいドアノブさん
と祈ってドアノブをまわしたが
ドアノブさんは心を開かず扉も開かず

そしてまた自分の過ちに気づく
そうだ何かを頼むときや願うときには
心から切に願わなければならないし
感謝の心を持たなければならないんだ
まずは目前のトラブルに対するイライラや
仕事に早く行かなければならない不安
様々な煩悩を体から削ぎ落としていく。
トルコのケバブのように

何も考えず、無になる。
何も考えないとか無になるのは意外と得意である。

しばらくすると

フッと体が心なしか軽くなった感じがする
ケバブが削ぎ落とされたのだ。


よしこれでいい。

そして感謝の気持ちを持つこと。
自らの命があること。

そして今までに関わったすべての人
両親、家族、友人、恋人。

会社の仲間からコンビニの店員まで。

今まで食べてきたたべもの
動物、魚、野菜。
そして身の回りのすべてのもの
家具、家電、ドアノブ。







ありがとう。










心からそう思うと、なんだか目頭が熱くなった。



その瞬間!



素敵なアイデアが脳裏に浮かんだ。

ウソップ寓話の北風と太陽を
皆さんはご存知だろうか

旅行者の上着を脱がせたのは
突風を浴びせるのではなく
暖かい太陽の日差しだった。
強引な手段ではなくあくまでも
任意であることが大事なのだ。

ちなみに北風さんと太陽さんが競ったら
圧倒的なエネルギー量の差もあるし
北風さんは突風浴びせるしかないんだから
フェアじゃないなと思うのだけれど
今回の話には関係ないので伏せておく。

素敵なアイデアというのはやはり
無心になって感謝の気持ちを持ってはじめて生まれてくるのだろう。



そうだ。よくいうではないか。

押して駄目ならひいてみろ!って。



ドアノブに手をかけ引いてみた。






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とれた








こうして私は
東京のど真ん中の一室で
脱出不可能の密室に閉じ込められた。




続く!!



2013年10月投稿記事


闘う二日酔い男

ピロロロロロ。
ピロロロロロ。




朝日が射し込む窓辺から聴こえてくるのは優しげな小鳥の歌声だった。それはどんな目覚まし時計のアラームよりも耳心地がよくて、僕を幸せな気持ちにさせてくれた。

と言いたいけど全然違った。

ピロロロロロ。
ピロロロロロ。

と、なったのは我が邸宅のインターフォンの音である。鳥のさえずりなんて生易しいものではなくて、人工的で無機質な、人を不愉快にする音である。どんな素敵な来訪者でも、こんなインターフォンの音で呼ばれたらなんか来ないでくれよ。ってなる。そんな音であった。しかもしたたかに朝まで飲んでいた僕はしたたかに酔っていてしたたかに二日酔いだったのであるから、余計に不愉快なのである。したたかって言葉はそもそもどんな意味なのかしらと思っていま調べたのだけれど、強いとか、ぶれないって意味らしいね。俺の解釈でなんか学校にやってきた新人教師が副担任になって宿題なんかに一つ一つ丁寧にコメント添えちゃう感じの弱々しいのをイメージしてたけど逆なのね。その後ろで腕組んで三浦のボイラーみたく鼻からしゅぽしゅぽ蒸気だしてる担任みたいなのをしたたかっていうみたいです。はい。
話が脱線したのだけれど、とりあえず我が邸宅に来訪者が来てますと。そこまで理解するのにも時間掛かったんだけどあれ?これ誰だろう?と思った訳ね。こんな朝早くにって時計みたら15時前だから昼やんっ!て一人ツッコミしてぐぇぇって胃液が逆流してきたけど、考えてもこんな時間に誰も呼んでないんだよね。あれー?酔った勢いでデリヘルでも呼んだかいな?それともうらみつらみを抱えた女が全てに終止符を打つために旅の仲間を引き連れてついに我が邸宅にやってきたのか?え?ヤバくないそれ?ってなって慌ててクラクラする身体をなんとか動かしてベットから起き上がって部屋のインターフォンを見ると、男が一人立ってたわけ。後ろにエルフもドワーフも魔法使いもいないから安心してすぐ通話ボタン押したのね。いま思うとあまりにも短絡的なのだけれど、二日酔いなんだから仕方ない。短絡的にしか思考できない。

はーい。どちら様ですかー?

と聞くと開口一声、男が言ったの。



NHKでーす。


って。あっちゃーしくじったね俺は。こんなアンケート用紙みたいなの小脇に抱えてる来訪者なんてNHKか宗教勧誘くらいなもんじゃん。なんでわかんなかったんかねー。と思って後悔したのだけれど、後悔してもしょうがない。


あ、いま誰も居ませんから。留守です。

って言ってインターフォン消したんだよね。そしたらものの2秒くらいでまた

ピロロロロロ。
ピロロロロロ。

ってインターフォンが鳴り出す訳。え!?なにこの人!?俺が居ることもしかして分かってるの!?とか思うとすっごい怖くなって部屋の中に隠しカメラとか盗聴器とかないか探し回ったのね。でもどこにもない。最近の盗聴、盗撮グッズというのは進歩してて探してもそうそう見つけれるものじゃないってこないだTVでやってたけど、確かにそうらしい。鳴り続けるインターフォン。ピロロロロロ。という音が僕のこめかみの中のいま一番頭痛でズキズキしているところに忍びこんで中国式マッサージをかましてくる。あぁーダメだこりゃあ。出るしかない。


どなたですか?


と聞くとその男はさっきも言っただろって顔つきでNHKですよ。と答えた。受信料を払うのは法律でも定められていて国民の義務なんですと。そういうバックボーンを持ち合わせているその男には一切の迷いはないらしく、大日本帝国天皇勅命を受けている教官が説教をたれている時のそれと同じである。マジでキモい。だがこの男はインターフォンを鳴らした部屋を間違えている。僕には僕なりのバックボーンというものがあって、誰がなんと言おうがNHKの受信料なんぞ払ってたまるか。という考えなのである。これはもう闘いである。こういう姑息な教官にはへんなごまかしをするよりも、端的にハッキリと、ピシャリと断ってしまうのが一番よい。僕は一つ咳払いをして、教官にむかってこう言った。


家にTV置いてないんですよ~



あー、言ってしまった。これ一番アカンやつだ。なんでこんなごまかした感じの言い訳をつけてしまったのだろう。短絡的すぎた。勅命を受けた男と二日酔いの男にはインターフォンには映らない、大きなハンディがあったのだ。その返答待ってましたとばかりにNHK教官はニヤリと口を片方だけ上げて、言ってきた。


では、自宅にTVが設置されているか確認させてください。


いかん。これはいかん。この男突入するつもりだ。部屋には42型の液晶テレビが鎮座しているのであって、これを見られるわけにはいかないのである。気持ち的には立て籠もっているオウム真理教の山荘に鉄球でもぶちまけてやろうかみたいな意気込みを感じてくる。この時点で気持ちの強さもすでに負けてしまっている。何か手を打たねばいけない。こんな時はあれである。語気とか覇気とかじゃなくてもっと身体の内面的なカーペットのめくった裏っかわのようなナイーブな部分を攻めねばいかん。しかしインターフォン越しで伝わるのは相手からは音声しかないのである。うん。ではこれでいこう。



タンターンタンターンタンターンタンターンターターターターターターン♫


これを知らない人はいない。そう、閉店前に流れる蛍の光である。もうすぐでお店が閉まってしまうからはやく帰らないといけないなっていう心理的状況に音楽で誘導するのである。YouTube蛍の光を流しながらインターフォンにケータイを当てて男に聴かせているのだ。我ながら名案である。みなさんは北朝鮮と韓国の国境沿いに巡らされたスピーカーを知っているだろうか。何万台というスピーカーから流れてくる相手国を揶揄する言葉が延々と流れていて、これにより国境周辺の相手国の情報操作を行っているのだが、それと同じである。これはもう闘いである。勝機が見えてきた。蛍の光を聴いて帰らないやつは日本人にはいないだろう。俺の勝ちだNHK!新世界の神になるのはこの僕さ!ぶはははは

インターフォンのモニターを見てみると、明らかに男の様子がおかしい。動揺しているようだ。かなりの効き目があったらしい。目が泳ぎ、口元がまごついている。勝負あり。
しかしそこで、男がこう言った。



TVの音楽ながれてますよね?TV置いてあるじゃないですか。TVがある以上は受信料を払う義務があります。払ってください。




なんとまぁ発想の転換というか、頭がいいのかバカなのか。男は奇策を練ってきた。いや、まてよ、もしかしてこの男はこれを待っていたのじゃないだろうか。全ては男の術中の中にいるのか僕は!!勝てない。この男には全て見透かされている。じゃあどうすればいいか。簡単である。インターフォンを無視するのである。僕は条例を淡々と繰り返し呪文のように唱えている男が映ったモニターを消した。あぶない、今の呪文もう少しで唱えきったら金縛りになるか即死するような呪文だったら怖かったなー。
無論、すぐさまインターフォンがまた鳴り出すのだが、これには応対しない。逃げるが勝ちよと言った信長曰く、無理に戦う必要はないのである。そうだよ無視。無視しよう。しかしいかんせんインターフォンの音が五月蝿いので、耳栓をつけてみる。するとどうだろう。まるで戦の跡地のような静けさに包まれる。無音には音がある。有名な作曲家の名言だが、まさにいま、その無の音を五体で噛みしめる。さぁ、寝よう。



だいぶ寝ただろうか。小窓から見える外の景色は既に暗くなっていた。時計の針は5時を指している。二時間ほど寝たらしい。さすがにNHKはかえったのか、インターフォンの音は止んでいた。つまり、これは僕の勝ちである。論破こそできなかったものの、NHKは集金を行って初めて勝利になるのだからつまりそういうことである。なんだ~やればできるじゃん俺。二日酔いも醒めてすこぶる調子がいい。勝利の凱歌でも歌いながら音楽を聴きながら風呂にでも入ろう。ケータイを弄っていつも聞くペントニの曲を流す。あれ?聞こえない?ケータイの音量をMAXにしてもペントニの五人の美しいアカペラのハーモニーが聞こえない。あぁそうだった、耳栓してたんだよね。そう思って耳栓を外した。











ピロロロロロ。
ピロロロロロ。


インターフォンが鳴っていた。
このとき、僕は負けを認めた。