しらぼ、

松本真青がSFを書くとこうなる。

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語4

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10月30日 午前2時

激しく鳴るクラクションの音を少しでも聞かなくて済むようにイヤホンをつけて音楽を聴く。午前2時だからって天体観測とか聞くテンションはカケラも持ち合わせてない。

 

少しずつウトウトと眠りに入ろうとする度に、他の車を追い越したり、舗装されていない道の段差で跳ねたり左右に揺さぶるバスによって強制的に起こされる。

 

だけど隣のJ君はまるでゆりかごに揺られるかの様に安眠している。微笑んですらいる。羨ましすぎてなんかムカつくからバスの窓から投げ出そうと思った。


いくら頭で観念していても、ジェットコースターの様なフワッと浮き上がる感覚の恐怖だけは拭えなかった。日にちが遅れてしまっても、列車で行けばよかった。と後悔した。


2、3時間おきにバスは小休憩のため、道端の空き地に止まる。もちろん眠れてなどいないので、とりあえず降りて外の空気を吸った。まだ暗かった。相変わらず砂と排気ガスの混じった空気だった。しかも便所臭い。


バスの運転席ではインドのクラブミュージックやゴアトランスが結構な音量でガシガシと鳴り響いていて、2、3人の運転手が運転中は眠くならない様に騒いでいたらしい。


運転手の1人に聞いてみた。

「運転してて眠くならないの??」


「大丈夫。ずっと危ないから眠くもならないさ。」

 

「日本は居眠り運転とかありますよ。」

 

「日本はとてもクレイジーな国だね。」

まぁ実際は中学生レベルの英語を駆使して会話したので、これくらいの会話も大変だった。流暢に訳するとこんな感じ。

そのあと、飲酒運転とかもありますよ。って伝えると、それも驚いていた。ガンジャは吸うけど酒飲んで運転するのはさすがに狂ってるな。と言い残して運転手はタバコを買いに行った。

 

バスの裏で立ちションしようとすると、いきなり「ノーノーノー!!」と言われた。

 

違う場所を指差している。どうやら立ちションはダメでトイレがあるらしかった。この日本人狂ってんな、モラルがないよ、トイレでやれよ。くらいの目で見られながら僕は言われた場所に向かった。

彼に言われた場所に行くと、確かにアンモニア臭が酷い場所だったからトイレがあるのだろうと思ったけれど、そこはただの原っぱだった。結局一緒じゃねえか。


皆が皆、好き勝手にその辺で立ちションしたり、大便していた。そこら中で用を足すとこのバスの停留所全体がウンコ臭くなるから、なんとなく同じ場所で用を足す様にしているみたいだ。なんだ、インド人にもそういう謙虚さがあったのか。


だが、そんな努力も虚しく、こんなにだだっ広い原っぱなのにわざわざ停留所の真裏でみんなトイレするから結局停留所が一番臭かった。もう少し考えればわかりそうなものを。


便所臭い停留所でとりあえずビスケットとクッキーを買ってまたバスへ。

よしっ、エンジン止まってる間に寝てしまえば勝ちだ!と思った時にエンジンがかかって轟音と共にバスは動き出した。もうなるようになるさ。寝るのは諦めた。

 

7時30分。諦めが肝心とはよく言ったもので、諦めた途端に寝ていたらしい。外はもう明るくなってきていた。

Googleマップで見た感じだとあと100キロも切っていた。もう少しだ。あと少し。

 


ふっと、横を見ると、J君の脇になぜか大量のコーン茶がペットボトルに入っていた。ん?こんなの売ってたっけ??

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謎に包まれながらまたしばらくウトウトしていると、J君も起きだした。このコーン茶は何?と聞くと、J君は頬を赤らめていた。恋でもしているのだろうか?青春ってやつですな。

 

 

さて!11時間程深夜バスに揺られ、僕たちは遂に次の目的地、バラナシへと到着した。ガンジス川までもう少し。

 

時刻は午前10時過ぎ。バスが着いたのはまぁ駅もガンジス川も近くないへんぴな場所で、そこにそそくさと降りる僕たち。外で各々立ちションを済ませ、さてどうしよう。


案の定、もう定番なんだけどバスの周りには沢山のバイタクとリキシャがいた。値段交渉もそこそこに適当なジジイの運転手のバイタクに乗り込み、ガンジス川周辺の宿に向かうよう伝えた。

 


このジジイこそ、この旅の重要キャラクター、カーンおじさんだ。この時僕らはこのジジイとこれから長い間旅を共にするなど、微塵も気づいていなかった。


カーン(通称) 年齢 不詳

レア度 ☆★★★★

言語 ヒンドゥー、英語

 

この旅に出る前に、インドについてそれとなくネットで情報を集めていた。その中でもやはり、ガンジス川は鉄板コースだし、様々なツーリスト達がガンジス川周辺の激安宿に滞在している。

 


無論、僕らは観光に来たのではない。旅に来ているので、ここぞとばかり激安の宿に泊まりたい!ということで前もって調べていた日本人宿のツーリストハウス「久美子の家」に行くことに。一日70ルピーくらいとネットには載っていて、さらに部屋からガンジス川が一望できる!とまさに願ったり叶ったりの宿なのだ。


久美子の家に行ってくれ!


そう伝えると、ははぁ、あそこね。はいはい。とカーンは慣れた手つきでハンドルを捌いて、小道をクネクネと進んでいく。幅1メートル弱の道を全速力のバイタクと、人や牛がすれ違う。当たらなければ大丈夫。これがまた、インドなのだろう。

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途中、細い道端で、バイタクはいきなりエンジンを切る。どうやらここから先は徒歩でしか行けないようだ。カーン的に一番英語の通じたからか、J君だけを連れて先にホテルに行くから君たちは待っとけ。とのことだった。

 


いや、一緒に行けば良くね??とも思ったが、うまく説明できないし、このままJ君がカーンに拐われて数年の間監禁されて、洗脳された後、カーンの弟子としてバイタクで稼いでいく人生というのもまた一つ興があっていいのでは?と思ったのでT君と待つことにした。その時は一緒にインド来たらJ君のバイタクで旅行しようね。なんて話をしていたらおよそ30分後、監禁されていないJ君がカーンと共に帰ってきた。


洗脳早っ!!!って思ったけど、どうやら洗脳されていないらしかった。


カーンはチェックインが済んだら、観光に行こう。下で待ってるね。と、早速カーン節炸裂で僕らのスケジュールを固めていく。


J君に導かれるままに、僕とT君は更に奥まった道を進んでいく。

100メートル程進んだ頃だろうか。

 


一気に視界が開け、そこには陽に照らされたガンジス川と、ツーリスト、ボロボロのレンガ造りの建物達だった。遠くで鳥が鳴いている。

 

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ついにきたーっ!ガンジス!と思ったけど、案外普通なのな。隅田川とかとそんな変わらない。川幅は倍近くあるが。それよりもやはり川沿いに伸びる建築物がどこまでも続いていて、圧巻された。

 


こっちですよ。

流暢な日本語でJ君が僕達を宿に誘う。あ、そっか、日本人だもんね。


幾人ものツーリストと、ターバンを巻いた仙人風のガチ勢とすれ違いながらしばらく歩くと、あった。久美子の家。

 

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想像よりも高台にあって、インスタ映えは十分だ。ジブリ臭さもある。壁にちっさく久美子の家って日本語書いてあるところも味がある。

 

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脇の階段を登り、こめかみに汗を感じながら宿の入り口へ。柵を開け、中に入ると、どこから靴を脱いでいいのかわからない感じの入り口。

 


日本人というよりタイ人っぽい感じの久美子さん登場。

 

こんにちはー。


久しぶりの日本語にほのぼのとする。

一気に親近感が湧く中、僕ら3人で泊まれる部屋があるか尋ねた。あるよ!と言われ、そのままパスポートを渡し、宿泊簿に名前やらなんやら書いていく。金額は一泊100ルピー。1人160円くらいか。快く承諾し、入り口脇の狭い階段を登っていく。

 


三階に行くと部屋?というより隔てのない広間にちっさいベッドが3つ。

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ここに仲良く並んで寝ましょうね。ということだ。早速、ダニ対策でタイ航空からかっぱらった紫のひざ掛けを広げ、丁寧にひいていく。荷物を置き、一息ついた。

 


ここ久美子の家は、昔日本人の久美子さんと、インド人の男が結婚し、インドでの生活が始まった時、久美子さんが文化違いすぎパネェ!日本人いねぇサゲポヨ!ってことで日本人旅行者を受け入れる宿を作ったところから始まったらしい。

 


日本人ツーリストの定番宿となったが、現在では日本人は少なく、中国人や韓国人の方が多いらしい。ネットでは壁中落書きがあったのだが、現在では落書きも全て綺麗に消してあり、ツーリストが置いていった本が日本のやつが多くて、来てたんだなぁー、としみじみ思う程度。

 


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その夫は2、3年前に他界したとか。いまでは久美子さんが一人で、たまにお手伝いさんを駆使しながら切り盛りしているらしい。(聞いたんじゃなくてググった)


僕らがベッドでうだうだしていると、久美子さんテキパキと床の掃除を始めていた。聞くとどうやら屋上にも上がっていけるらしい。眺めも良いとか。


部屋の奥にある別の階段を駆け上がると、そこには動物園の様な鉄網。どうやらこうやって閉ざさないと勝手にサルが宿に入ってきてツーリストの荷物をなんでも盗んでしまうらしい。

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鉄網の戸を開けて出ると、そこは陽当たり抜群のガンジス絶景スポットだった。たしかに気持ちいいけど、暑い。

 


ここでガンジス眺めながら焚きますか!ということで巻き巻きして一本を3人で回して吸う。

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いや、確かに気持ちいい。だけど、暑い。上裸になって吸っていく。

 

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確かに水面はキラキラと輝いて綺麗だが、やっぱり真夏の隅田川っていう印象が拭えない。大したことないなー。歴史的にはすごいけど、実際見ると大したことないガンジスやなー。


汗もかいたし、3人でシャワー浴びることに。二階にシャワーがあるらしい。ただ、シャワーの水はガンジス川の水を組み上げただけなので、決して飲んではいけないとのこと。

 


二階に行き、シャワーらしき場所を見つける。半畳くらいの広さに石畳みの雑な造りになっていて、シャワーも配管ぶった切り、トイレも汚い、さすが久美子ハウスってな具合。

3人仲良く順番に体を洗っていく。もちろんお湯なんて出ない。真水ガンジス。


ヒーヒー言いながら体洗ったのに全くサッパリしないままタオルで拭いてみんなを待っていると、どうやらシャワールームの横には個室タイプの宿もあるらしかった。


謎の音楽が少しだけ漏れ聴こえてくる。ちょっと挨拶してみよう。


こういう、得体の知れない何か(まぁ人だろうが)と対面するときは、J君にお願いすることになっている。

ノックするJ君。暫しの沈黙。

扉が開いた。


出てきたのは日本人だった。

黒縁眼鏡、ボサボサの頭髪、オタクまっしぐらの顔面、痩せた身体、身体のあちこちに意味不明な刺青。とにかくカオス。目がいっちゃっててだいぶ玄人なんだな、と思った。


あ、どうも。今日からお世話になるので挨拶に来ました。よろしくおねがいしまーす。


あ…どうも。日本から来たんですね…


インドでこんな場当たり的な挨拶を交わすなんて思ってもみなかった。しかもどうせ一泊くらいしか居ないし。この男も僕らのノックが無ければ扉を開けるときは今後ないだろう。


ガンジス川のほとりで長期滞在しようなんてやっぱりちょっとイかれてる。

ただ、5、6万握りしめてここに来れば、とりあえず宿代は一年くらい払えることを考えると、ニート魂も震えるのかもしれない。

 


数時間が経ってボーッとしていると、久美子が僕らを階下から呼んでいた。どうやらカーンがしびれを切らして呼んでいるらしい。めんどくさいジジイだ。誰も待っとけなんて言ってないし。


まぁ、ぼちぼち、出かけますか。という感じで僕らは表に出た。カーンはイライラをあまり顔には出してはいなかったが、多分結構頭にきているかもしれないと思うと非常に愉快だった。


とりあえずお腹空いたわ!


と言うとカーンは、何言ってんだコイツ?みたいな顔をした。

そうだった。日本語伝わらないんだった。

 


どうにかお腹空いた事を伝えると、カーンは、それじゃあ美味いレストランがあるぜ、そら、早く乗れよ。みたいな感じのことを言った。

 


しばらく乗っていると、なんとも入り口のぼろっちいレストランに着いた。ここが美味いんだ。みたいなことをカーンは言った。

 


中に入る。薄暗い。

とりあえず僕はグラタンを頼み、J君とT君は何かしらを頼んで食べた。記憶にもないくらいなので、あまり美味しくなかった。写真すら撮ってない。値段は一品ごとに300~600ルピーくらい。酒もなく、スプライトを頼んで飲んだ。とりあえず次に行こう。僕らは店を出た。


ソナープラ(間違ってるかも)と呼ばれるこの地域には、ヒンドゥー教だけでなく、一部イスラム教徒の人達も住んでいるとのことだった。後日たしかにGoogleマップで見ると、あちこちにモスクがあるようだ。

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右、カーンの後頭部。

 

 

カーンがバイクを止めた。

ついてこい。みたいなことを言うとズンズンと歩いていく。このままシカトして置いて行こうとおもったけれど、こんな知らない場所に残されたら置いていかれるのは僕らの方だ、と気づいたのでついて行った。

 


石壁の建物の間を通り抜け、広場のような場所に出ると、そこには沢山の子供達がいた。ん??


すると、いきなり現地人のメガネの男が現れた。

 


ミナサン!コンニチハ!

 


日本語がめちゃくちゃ上手い。

喋り出す彼の話を聞くとどうやら、なぜか僕らにこれから、イスラム教徒の人が作る民芸品を見せてくれるらしかった。

 


この日本語の上手いメガネはここでイスラム教徒の学校の先生をしているらしい。学校の先生をしながら、観光客までさばいていくなんて、なんて器用なメガネだ。僕らはメガネの言うがまま、そばの建物に入っていく。

 


中には大小様々な機械がガタンガタンと音を立てて動いていた。織物の機械だ。どうやらここでイスラム教徒の人が仕事として織物を作り、それをニューデリーコルカタなどの観光地で売るらしい。

 

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機械の上には点字のような板が蛇腹状に幾重にも着いていて、それが機械に1つ1つ当たることで動きが変わり、柄を作っていくらしい。京都の西陣織と同じような造りだ。

 


コノアタリニハー!、タクサンノー、

イスラムノヒトガー、スンデマース!!

 


それくらいのことなのにすごいテンションで説明してくる。僕らは何度も、ふーん。ふーん。と、頷く必要があって、徐々にめんどくさくなった。

 


工場見学はそれくらいにして、メガネを先頭に僕らは外に出た。いつのまにかカーンはいなくなっていた。

 


カーンがバイクを止めた方にメガネは歩いていく。水色の建物を指差してメガネがクイズを出してきた。

 

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アレハナニカワカリマスカー?

 


水。

 


セイッカイ!!アナタスゴイネー!!

 


…そうか??

 


コノアタリニハー!、タクサンノー、

イスラムノヒトガー、スンデマース!!

 


ソシテー、アノミズヲパイプデナガシテー、イスラムノヒトタチノー、イエニトドケテイマース!!

 


そんな話をしているうちに僕らはバイクを止めた場所に戻ってきた。カーンのバイクはまだそこにあった。メガネは駆け足で正面の建物の階段を上がり、僕らを手招きしている。僕らは促されるままに中へ入った。

 


入り口を入り、部屋に入ると、

奥まった、細長い形の部屋の中には沢山の織物があった。絨毯からストール、ポーチまで大小様々だ。

 


サテミナサーン!!

コノアタリニハー!、タクサンノー、

イスラムノヒトガー、スンデマース!!

ソシテー、アナタタチガサッキミタ、

タクサンノーシナモノガココニアリマース。

 


要はメガネは観光ガイドをかって出たのではなく、ここの織物を売りたいだけらしかった。

冷たいコーラが僕たちに出された。

 


いやぁ、いいかな、別に。

 


誰ともなく、そんな言葉が漏れた。

その言葉をメガネは聞き逃さなかった。

 


ダッタラー!

 


コンカイハ、ヤスクシテオキマスネ!

 


もう一人の男が部屋に入ってきて、壁の棚に入れられていたストールをごっそり取り出し、一枚ずつ広げて見せていく。

 


コレハー、イチマイコレデスヨ!

 


メガネが電卓を取り出し、慣れた手つきで弾く。のぞいてみると1500とあった。1500ルピー。

 


コレラハー、サッキミタバショデ、ツクッタモノダカラー、トテモイイデス!

 

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そんな間にももう一人の男は狂った様にストールを広げ続けていた。そんなにたくさん見ねーよ。僕ら3人はきっと心の中で同じことを思った。

 

あのー、俺要らないんで、髪切りに行きたいです。T君がそう呟いた。

 


メガネはなんでもお任せあれ!とばかりに彼を床屋に連れて行ってくれ!みたいな感じのことを声を張り上げて言うと、カーンが出てきてT君を連れて行った。カーンお前完璧メガネ側の人やん。

 


T君が居なくなった後、僕とJ君はストールを買い、店を出た。ハメられた感はあるが、物は良かったし安かった。

 


表に出ると、T君は店のすぐ横の床屋で髪を切られていた。何カットとかヘアスタイルの名前は僕はあまり知らないが、わかりやすく説明するならば、コボちゃんとタラちゃんと中間くらいだ。600ルピー。

 


満足したT君と共に、僕らはまたカーンのバイタクに乗り込んだ。どうやら今日はガンジス川で大きな祭典がある、とのことだった。川を舟で降って見るといい。みたいなこと言ってたけど結局カーンが予定組むのね。カーンハンパないって!

 

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戻り道に気づいたが、やたらと丸太や木材が道の両脇に大量に積まれている。

あれは火葬の時に使うのさ。的な感じでカーンは指差して言った。頼むから前を見て運転してくれ。

 


僕らは一旦久美子ハウスに戻り、買ったストールを置いて、外に出た。だいぶ日は暮れていた。夕日が見えるわけではなかったが。6時半過ぎ。

 

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舟に乗る為川辺まで階段を下る。

捨てられたゴミが異臭を放ち、ヘドロが泡を吹いて漂っている。思わず爪先立ちみたいに歩く。汚いよ。と言うと、ガンジスは神聖な川だから、汚くなんかないよ。の一点張りだった。目の前のゴミが見えんのかい。

 

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J君のコーン茶がほとばしる。

 

 

 

舟を漕ぐのはカーンではなく、老人とその息子らしき少年の二人だった。カーンは船には乗らないらしい。戻ってきたら、酒が飲めるレストランがあるよ。と言い残し去っていった。

 


舟に乗り込む。老人が舟に乗って櫂を漕ぐなんて、まるでヘミングウェイですな。と思っていたら少年が櫂を握り、力強く漕ぐ。

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かなり上手い。きっと普段からこうやって働いているのだろう。勉強出来ず、言葉も喋れないが、舟を漕がせればピカイチだ。

 


波の波紋を眺めていると舟酔いした。かなり頭が痛くなってきた。

 

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他の観光客も舟に乗っていた。

 

薄暗い川辺を下りながら、川沿いの灯りに照らされた建物を眺める。ヨーロッパさながらの豪華な造りだ。

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昔この辺りは王族やら貴族やらが川辺に住んでいたらしい。まぁ景色抜群だしね。

 


更に進むとあちこちで火葬の炎が燃えていた。キャンプファイアーの様に井形に薪を組み、24時間亡くなった人を燃やし続けるらしい。強烈な臭いがするのかと思えば、意外と無臭。

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インドでは火葬と水葬との二種類がある。子供や妊婦、不慮の事故などの場合は火葬にしないで、そのまま遺体をガンジス川に流す。ただ、火葬はお金がかかってしまうので、遺体を水葬する場合も多いらしい。


燃え切った遺体は日本の火葬の様に綺麗な細かい灰にはならず、焼肉のコゲみたいになる。火葬場の人が棒で突っついて川まで転がしていき、川に落とす。臭いを嗅ぎつけた野良犬とカラスが辺りを埋め尽くす。


そのすぐ横で沢山の人が沐浴したり、川の水を飲んでるから結構、カオスだ。

 

ようやく僕らを乗せた舟は今日の祭典の場所にたどり着いた。大小様々な船が寄せ集められ、綱で繋げてある。観光客を沢山乗せた船が多い。外国人がこれでもかってくらいカメラを構え、写真を撮りまくる。


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意味不明な音楽と太鼓の様な音、カメラのフラッシュに包まれて、なんとも不思議な場所になった。ターバンを巻いたガチ勢が陸地でお祈りを繰り返す。もうカオス増し増し。

1時間くらいその雰囲気を満喫した僕らは舟の縄を解き、戻ることに。

 


途中、一回試しに櫂を漕いでみようよってことで、実際にやってみた。

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息も合わず、タイミングも合わず、舟はグルグル旋回したりあさっての方向に進んでしまう。僕も佐世保学園で少しばかり鍛えたつもりだったけど、全くダメだった。

 


舟は違う場所に着いた。久美子ハウスよりだいぶ下流の場所。

全て予定調和なのだろう。岸にはカーンが立っていた。

早く来いよ。みたいなことをカーンは言い、またバイタクに乗り込む。ビールが飲めるレストランに連れて行くのだと言う。船酔いには迎え酒が一番。僕は期待に胸が膨らんだ。

 


レストランにつくと、カーンのくせに割と綺麗なレストランだった。中に入ると他の外国人観光客もいた。

僕らはそこでビールで乾杯。やっぱり酒って良いですなぁ。ちなみにおでこの赤いのは舟で物売り少女から渡された紅?チョーク?みたいなやつで、額につけると集中力が増すのだとか。集中してお酒飲みます。


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1時間程度飲んで食べて、そろそろ帰りますかって時にお店の店員は未会計だったのを忘れていたみたいだったので、こちらから教えるのも癪だから黙ってバイタク乗って逃げようぜ。という算段に。

 

インド人より非常識な日本人3人の食い逃げ作戦だった。

 

コソコソとバイタクに行き、カーンに出せ出せと煽る。
バイタクにエンジンがかかり、走り出したものの、すぐに気づいた店員が大声で走りながら追いかけてきたもんだから即刻バレた。

 


あっ、そういえば忘れてたね~なんて顔してサラッと会計を済ませたけど、心の中で舌打ちした。いやいや、こちらこそ忘れててすいません。みたいなことをインド人店員が言ってたので、案外この店員良い奴だったな、と少し食い逃げしようとしたことに心が痛んだ。

 


すっかり暗くなった夜道を走り抜け、久美子ハウスに帰った。

 


明日の朝、日の出を見たほうがいい。絶対に。カーンがそう提案した。どうやら舟で早朝ガンジス川に繰り出し、朝日を拝ませるよう舟をまた用意しておくよ。とのことだった。僕らは無論、OKした。

 


その時に、必ずガンジャを巻いて持ってきた方がいいぞ。カーンはそうアドバイスをくれたが、僕らも勿論、そのつもりだ。てかなんてこと言うガイドだ。

 


カーンと別れ、僕らは部屋に戻った。

疲れからか、僕とJ君はそそくさと眠りについたが、T君はまだ寝れなさそうだ。目を閉じて今日を振り返る。あまりにも濃い一日だった。4日目が終わってもまだ旅は半分以上残っていた。長すぎ!!

 

 

 

つづく。