しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語3

 

 

そろそろアグラにつくよっ!

 


そう相席の夫婦に呼ばれて、ボンヤリとした意識のまま目を覚ました。

約2時間半程、距離で200キロほどの道を進んできた。

f:id:shirabo:20190104114544j:image

  200キロはだいぶ進んだなぁ、と思ったが、Googleで見ると全然まだだった。左上の黄色ピンがニューデリー、小さい赤ピンがアグラ、そして我々のゴールであるコルカタ空港は画像右端の赤ピン。その距離1470キロ。

 


日本の距離で例えるなら茨城県から鹿児島市まで山陽高速を使って1470キロ。200キロだと茨城から熱海くらいだ。まだちょっとしか進んでいない。

 

慣れ親しんだ列車とも別れを告げ、僕達はホームに降りた。すっかりあたりは暗い。夜の11時。今回は予算を考えて、アゴダのアプリを利用して宿の予約を済ませておいた。時間は焦らなくても良かった。

 


ホームには沢山の猿。間違えて上野動物園に来てしまったのかと思ったけれど、猿があまりにも野性味溢れていて、日本で見る猿達とは別格なのだとすぐ分かる。

長いホームを歩き、階段、通路を抜けて改札口へ。もちろん改札でPASMOとかSuicaとかはない。特に券も確認されない。全然無賃でいけそうだ。

 


外には毎度おなじみのバイタクとかリキシャが数台。我先にとインド人達が僕らに向かってガンガンに喋ってくるが、唾が飛び交い過ぎて汚かった。

 


とりあえず一番チープな奴にする!との話し合いの末、1人のおっさんのバイタクに乗り込んだ。

 


Googleマップのスクショをおっさんに見せて、ここが分かるか?と聞く。マトモに見てないまま、オーケーオーケー。と答えておっさんはアクセルを踏む。もう、なるようになるさ。

 

 

 

数十分程、砂埃を吸い込み、クラクションの喧騒を聞きながら進んで行くと、本日の宿に到着。

f:id:shirabo:20190104114742j:image

正面はすごく立派な感じだが、側面は塗装も何もない。びんぼっちゃまみたいなツーリストハウスだ。3人一部屋で800ルピー。安い。中庭のある造りで清潔感もよし。インドに旅行に来たら是非ここに泊まってほしい。名前知らんけど。

 

f:id:shirabo:20190104114751j:image
朝買ったノンアルコールビールがここで初めて役に立つ。皆で吸って気持ちよーく就寝。ちなみにこのころ日本ではハロウィンで軽トラックがひっくり返ったりしてニュースで話題になっていた頃だ。ハロウィンを微塵も感じさせない国、それがインド。

 

10月29日 月曜日

 


誰ともなく、ごそごそと起き出す。快眠。天井にファンがあるから暑さも無く快適なのだが、いかんせん根元が今にも外れそうなくらいボロくて、いつ高速回転ファンが僕らに落ちて来てミンチにされるか分からないのが怖かった。

 


まだ時間は朝の10時ごろだが、世界遺産のタージマハルを見るためにも今日は早起き。荷物をまとめながらみんなで一服。いや、三服くらいした。

マンチになったゾンビ達3人は表の中庭に。もうお腹空いて空いて仕方ない。炒飯みたいなのとサンドイッチとナンのついたカレーとチャイを頼む。

待つ間はまたみんなでトランプ。

空腹を感じながらトランプで笑いが止まらない。最高なひと時。

宿の主人もこういった手練れ供はおそらく何度も会っているらしく、慣れた手つきでキチガイな量の料理を運ぶ。

ひたすらにかき込む3人。かなり美味かった。

うろ覚えだけど会計が2400ルピーくらいで宿の三倍くらいになっていた。

 


お腹を満たした僕らは早速タージマハルへ向かう。

 

 

f:id:shirabo:20190104114909j:image


タージマハルに近づくにつれ、道の舗装も綺麗になってきている。さすが世界遺産

 

f:id:shirabo:20190104114933j:image

赤土とレンガで作られたこちらはアグラ城。写真だとわかりにくいが、こちらもなかなかデカい。更に道を進んでいく。

 

入場チケットを買い、ガイドを雇う。本当ならガイドなんてつけたくないが、あまり時間に余裕のある旅ではない。時短と撮影と解説を聞く為、同行してもらう。

 


荷物を預ける場所に着くと、そこには長蛇の列が。おそらく何時間も待たされるであろうと覚悟したが、なんとガイドが付いているので列に並ばなくても預けることができるらしい。ディズニーでいうところのファストパスですか!

ガイド雇って良かったーって思ったけど、入り口の混雑を力づくで通り抜けただけなので、絶対にガイド関係ない。荷物を預けていざ、タージマハル!

 

f:id:shirabo:20190104115144j:image
f:id:shirabo:20190104115159j:image
f:id:shirabo:20190104115205j:image
f:id:shirabo:20190104115154j:image
f:id:shirabo:20190104115210j:image
f:id:shirabo:20190104115149j:image
f:id:shirabo:20190104115047j:image
f:id:shirabo:20190104115433j:image

 

 

 

J君の友人の結婚式メッセージとして日本語を喋らせる。ガイド料払ってるんだからこれくらいしろよっ!て感じだ。なかなか流暢な日本語。

 

 

 

タージを存分にマハルした僕らは荷物をまた取りに戻った。預かりチケットを渡して出ようととすると、T君にストップがかけられた。

 


どうやら僕がまとめてチケットを渡したから、T君の分まで確認もせずにチケットを破り捨ててしまったらしい。ブチ切れるチケット確認のおっさん。

 


だがここで負ければ理不尽な扱いを受けて警察に行くか、多額のチップを請求されるのは目に見えている。負ける訳にはいかない。怒鳴り散らして対抗する僕達。

 


30分ほどの戦いの末、もう好きにしろと言わんばかりの態度になったおっさんを横目に睨みながら、僕達は荷物預かり所を去った。

 


バイタクの場所に戻ると、運転手は巻きタバコを吸いながら僕達を待っていた。臭いを嗅いでわかった。絶対これガンジャやな。

 


バイタクに乗り込み、お腹が空いたと言うと、運転手は巻きタバコ吸いながら、それなら美味い飯のあるレストランがあるよ。と答えてくれた。きっと彼もマンチなのだろう。ハンドルを切る動きが大層鈍くなっていたのが心配だったが、無事に僕達を乗せてレストランにたどり着いた。交渉の末、僕達がレストランで食事している間にガンジャ仕入れて来てくれるらしい。

 


僕達はレストランに入った。

キンッキンに冷えたビール。

旨味のあるカレーとバターライス。

香草と練ったカバブ

どれもが僕達を幸せにしてくれた。

 


お腹いっぱい食べて、1人3000ルピー。やはり原因はビールが高いからだった。それでも満足したから不満は無かった。僕達はレストランの外でトランスを流しながら牛を見ながら、ひたすらに運転手とガンジャが来るのを待った。

 

ナイスなフォト。

f:id:shirabo:20190104115256j:image
f:id:shirabo:20190104115250j:image

そしてトランスと牛。

 

 

 

遠くからバイタクのエンジン音が聴こえてきた。眺めると見覚えのある運転手。ようやく戻ってきてくれた。

袋に無造作に詰められたガンジャはかなりの量だった。金額は忘れたが、エアロシティーよりも破格に安かった。

一本巻いて、みんなで回す。

 


牛が鳴いた。

のそのそと動いている。

もうすぐ、日が沈む。

 

 

 

 

 

僕らは移動しなければならない。

あまり時間に余裕が無かった。

 


キャリーバッグなどの大きい荷物をツーリストハウスに取りに行く。

列車の券は取れるのか、宿の主人に聞くと、もう当日の券は無い。とのことだった。ふっかけてるのかもしれないが、パソコンのモニターを見る限りでは本当に当日では取れないらしい。あと一泊すれば良いよ。とも言われたが、断った。そんな時間に余裕はない。

 


バイタクの運転手に聞くと、それならバスで行けばいい。と答えた。バスならまだ空きもあるだろうし、値段も安いよ。とのことだった。すぐさま決めて、バスのチケット販売店に行った。

 


1人600ルピーくらいだったと思う。

それで次の街バラナシまで行ってくれるそうだ。たしかに安い。どんなバスかもわからないが、もうなるようになるさ。

 

f:id:shirabo:20190104115324j:image

わりとちゃんとしたバス。当たりだ。

餌を求めた動物がウヨウヨと集まってきていた。

 

中に入る。どうやら2人一間と1人一間で別れるらしい。中めっちゃ狭い。絶対にホモっぽいから1人で寝たい!!

僕らは拳を振るいながらジャンケンをした。

f:id:shirabo:20190104115424j:image

結果、負けた。

僕とJ君が同じ一間になった。畳一畳分くらいのスペースに荷物を足元に置き、身体を寄せ合いながら横になった。足元のモニターは誰かが蹴破ったのか、バリバリに割れていた。足を伸ばすと確実に刺さる。

 


これマジかよ。これで朝までかよ。そう思ったとき、バスがエンジンをかけ、動きだした。けたたましいクラクションを連発し、ひっくり返る!と思うくらいのGを身体中で感じながら、

僕達の旅はまだまだ続いた。

 

 

 

つづく。