しらぼ、

松本真青がSFを書くとこうなる。

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語1

 

 

 

 

キィ、キィ、ザプン…

 


聴こえるのは櫂の軋む音と小さな波とボートとが微かにぶつかり合う音だけだった。朝6時。岸辺には色とりどりの衣を着た人達が祈り、体を清めながらも、今にも登るであろう日の光を待ち望んでいた。

 


風も穏やかで、ガンジスの水面はまるでCGグラフィックの様に規則的に、そしてゼリーの様に弾力があり、なんとも判別つかない鮮やかな色をしている。

 


根元ギリギリまでガンジャを回して吸った。ゆっくり、息を吐く。煙が空に昇る。景色がかなり鮮明になる。色が濃くなっていく。その時だった。

 

 

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日が昇った。なぜガンジスの人々が神を信じて生きているのか、少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、という訳で今回は10月25日~11月5日までの12日間に及ぶ日本→タイ→インドの放浪の旅の物語。

 

 

 

10月25日、夜の11時、羽田空港国際ターミナル。

これまで何度か海外に行ったことはあるものの、羽田空港から海外に行くのは初めてだった。偶然格安航空券を探していたときに、成田と同じ価格で行きの便だけが羽田発だったので、迷わず選んだ。

 


出発は明日26日の朝10時35分。

んっ?無駄に来るの早くないか?と思った人もいるかもしれないが、それには理由があった。

 


今回の旅は前回の韓国放浪記とは違い、僕と仲間2人を連れた3人での旅。

「J君」と「T君」だ。ほんとはどっちもJだけど、わからなくなるので変えておいた。

 


この2人がなかなかの浮世離れで、時間を守ってくれる保証が全く感じられなかったのもあって、今回は前日から羽田空港乗り込み、そのまま朝まで過ごせば流石に遅れない、と踏んだのだ。

 


ただ、この浮世離れ達が海外でみせてくれるであろう化学反応に僕は期待で胸が高ぶってもいる。

 


1階のLAWSONで酒を買っては飲みを繰り返し、酩酊したら4階のモスバーガーをかぶりつく。車椅子で遊びながら屋上テラスに出る。しばらく日本ともおさらばだ、と思うと、なぜか平凡で星も大して見えない夜空にも愛着がでてくる。

 


4階にある日本橋という橋のデザインの通路の脇で、僕ら3人は眠りについた。一応人に聞かれたら、日本橋に泊まった。と言って良さそうだ。

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10月26日

硬い床が深夜になると更に冷たくもなってしまいなんとも寝心地の悪い夜だった。ただ、前の職場の先輩が「インドならこれ持ってけよ!」とふざけて渡したホッカイロがここでまさかの大活躍を果たし、辛うじて寒さを凌いだ。ただ、夜間の屋内の工事現場がめちゃくちゃうるさくて、ほとんど眠れていない。

 


朝の8時ごろになると、ぞろぞろと仲間達も起き出す。すぐ脇のモスバーガーでコーヒーを啜り、屋上テラスへ。

 


冷たい風が吹き抜けるものの、目が覚めてちょうどいい。T君には欲しそうにしていると思ってクーリッシュのバニラ味をあげた。彼は喜びのあまり涙を滲ませながら美味しそうにクーリッシュを飲んでいた。見ているこっちが寒くなった。

 


チェックインを済ませ、携帯を充電しながら待っていると、10時20分。結構ギリギリな時間に。慌てて手荷物検査をくぐり抜け、早足でゲートへ。こんなに早く来ておいて僕らが一番遅くゲートに着いたらしい。

 

シートの予約もできていなかったけど、3人とも並びだった。スカイチケットの奴ら、上手いことやってくれてたらしい。


時刻通りに機体は動き出し、そして、日本の地を離れていった。


フライト時間、6時間半。時差があるので、タイに到着するのは15時前後。

タイ航空はわりと乗り心地が良い。僕自身、そんなに数多の航空会社に乗った訳じゃないので、あまり参考にはならないだろうが。機内で配られたタオルケットはこの旅先で必要だと思い、ちゃっかり拝借する。


飛行機で暇を持て余すと思って一応本も持ってきたけれど、眠気でヨメズ、されどネレズ、宮沢賢治的な気持ちで結局座席についているモニターで映画を2、3本観た。デッドプールの1.2作と忘れたけどスパイ映画。疲れもあって、とても長く感じた。

 


ようやくタイのスワナムンプール国際空港に到着。機体から降りてバスへ。ムッとする空気。アジア特有の高温多湿で一気に首筋から汗が流れる。それでもテンションが上がったせいか、疲れは吹っ飛んでいた。

 


入国審査を受け、ニコチンの切れた仲間たちはそそくさとタバコを吸いに表へ。それからスワナムンプール空港の電車に乗り込み、バンコク市内の宿を目指す。

タイはトランジット時間を伸ばして立ち寄っているだけなので、インド行きの飛行機は翌日の夕方17時55分。あまり遠くへ観光もいけないので、バンコク市内にあらかじめ宿を取っておき、近場でタイを感じようじゃないか、そらよかタイ、といった感じだ。

 


1時間ほど電車に揺られ、僕らはバンコク市内に到着。ナナという場所で、バンコク市内ではバッポン、ソイスクンビットに並ぶ夜遊び街になっていて、観光地全開の程になっている。移動続きと高温多湿で体の疲労はなかなかのピークを迎え、ホテルに入る。予約を確認して部屋へ。駅へのアクセスと、まぁ初日にタイで乞食宿みたいなところはさすがにいいやと思い、1人あたり1800バーツのホテルに。なかなか快適な宿。

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荷物を置き、シャワーを浴びたらまた元気が出てきた。3人で表へ出た。まずはこの旅に必要な衣服を買わなくては。

外の天気が怪しくなっていて、スコールが来るかな?と思ったけれど、小雨。日本から履いてきた裏面ツルッツルのやっすいスリッパで何度も転びそうになり、死の危険を感じながら近くの店へ。Tシャツやサンダルも数多く売ってあり、僕とJ君は購入。履いていたスリッパはもう要らないのでお店に脱ぎ捨てていった。

 


それからナナプラザで酒を浴びるように飲む。ハイネケン一杯200バーツ。日本円で600円くらいだから日本ともう値段も変わらない。現地の酒でもないので高い。

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酩酊しながら3人移動し、ビリヤードのあるバーへ。

一回250バーツだと聞かされ、高すぎだろと思いつつ二度ほどプレイしていたら、25バーツとの聞き間違いだったと分かった。酒ももう充分だったので、店を出て、通りに見かけたラーメンを食べに行くことにした。

数多の声かけとオカマ達。途中いきなりオカマからちんこ触ってくれって言われて服の上から触ったらめっちゃでかい息子さんだった。せっかく大きいのに、なんてくだらないこと考えてたら1000バーツで寝ない?と聞かれた。ムリっす。

その後も幾度となく襲いかかるオカマを避けながら屋台へ。1人50バーツ。150円。それとソーセージ焼きもあった。一本25バーツ。

野良犬と声かけがうるさかったのでそのまま大通りにでて道端で汁を啜った。味は鳥の出汁がよく出ている春雨ヌードルといった感じ。ネギの臭みがあったけど、かなり美味かった。ただ強烈に辛い。3人揃って汗が滝のように流れた。ソーセージの方は、なんか身体にいかにも悪そうな油の味がするサラミみたいで、僕は受け付けなかった。

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汁を啜りながら目の前の大通りの喧騒を見ていると、スッゲー、アジアだな。と語彙力の無い感想が浮かんだ。

 

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僕らはそれぞれ部屋に戻り、汗をシャワーで流し、眠りについた。

 

 

 

10月27日

起きたのはもう昼の12時ごろだった。

酒をかなり飲んだ割に二日酔いにはなっていなかった。それよりもやっとしっかりとした睡眠が取れたからか、かなり体調は良かった。

 


Tはもうすでに起きていて、部屋に行くと音楽を流しながら気持ち良さそうに朝の一服。Jはまだ寝ているかもしれなかった。あまり遅くなってしまうと、飛行機の時間が迫ってしまうので、早いうちにチェックアウトしてもう少し、バンコクでぶらぶらとしたかった。そんな時、T君が僕に言った。

 

「あの、お金ないんで借りていいですか?」

 

最初聞いた時、んっ?ってなった。何を言っているのかな?と。聞いてみるとどうやら旅費をもう全部使ったらしい。驚きを通り越して笑いしか出てこなかった。さすが、T君。彼を見ていると、自分の心配性とか神経質さがかえって可笑しくなってくる。

 


部屋の掃除を回っている掃除のおばちゃんが廊下にいたので、「友人の部屋を開けてくれ!」と頼んだ。ほいほーいとおばちゃんは確認もなしにマスターキーでガチャガチャとドアノブを回して開けた。セキュリティもクソもない。

 


部屋の中を覗くとJの姿はない。バンコクに惚れて、いわば駆け落ちのように失踪したのだろうか。僕のことはもう置いて、インドに行ってください。僕は一生バンコクに残ります。そう語るJの姿が脳裏に浮かんだ。

 


が、トイレを開けたらウンコしているだけだった。セキュリティは無いが、確かにクソはあった。

 

 

 

無事チェックアウトを済ませ、観光するから荷物だけ置かせてもらい、僕らはまたナナプラザ周辺をぶらつく。

とにかくお腹すいたので、ちょっと良さげなレストランに入る。

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キンキンに冷えたビールが出てくる。そのほかの海老春巻きとかチャーハンとかカルボナーラとか、どれを頼んでも最高に美味くてびっくりした。もちろん現地人は高くて食べないのだろうけれど。3人で3000バーツ。9000円と高かったが、構わないくらいに美味かった。

 


同じ通りを進むと、タトゥースタジオがあった。もっと崩れかかったトタン屋根みたいなところでタトゥーいれて欲しかったんだけれど、期待を裏切るようにかなりの清潔感だった。日本にもこの規模のスタジオは無いだろう。

 

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JとTはデザインを決めた。Jは今回が人生初のタトゥーだった。左腕にチベット密教の文字。Tは幾何学模様っぽいシンプルな薔薇。

飛行機の時間が迫っていたので、あまり大掛かりなデザインは出来なかった。インドに行きたいのにここで飛行機に乗り遅れるなんて事だけは避けたかった。

 


デザインが固まったところで、僕はタトゥーを今回入れるつもりはなかったので表へ出て、マッサージに行った。

 


タイのマッサージはとにかく安い。

1時間300~400バーツくらいなので、1000円弱で受けられるし、結構上手い。

 


1時間程マッサージを受けて、そろそろあの2人もタトゥー入れ終わってるなー、と思いながらスタジオに戻ったが、なんとTだけがタトゥーを入れていて、これからJのタトゥーが始まったところらしい。てっきり同時に始めていると思っていたので、かなり焦った。飛行機は17時55分。空港まで1時間程かかるのに、すでに15時を回っていた。空港での検査うんぬん考えるとヤバそうだった。

 

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が、さすがにタトゥーを入れ始めたところで、途中で辞めさせるのだけはあまりに可愛そうだった。しかも始めてのタトゥー。もうなるようになるさ、と思いながらスタジオにあるチュッパチャプスを舐めた。あまり美味しくない。

 


40分程でタトゥーが完成した。なかなか綺麗に入っていて、タイでも充分なクオリティなのだと知った。時間は16時30分。昨日の電車のルートだと間に合わない。なので、最短距離で空港を目指す為に中間の駅までバイクタクシーで行くことにした。おそらく15分くらいは早くなる。

 


僕らは急いでホテルに荷物を取りに戻ってから近くのバイクタクシーの運転手と交渉し、バイクの荷台に乗った。

 

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三台のバイクにそれぞれが乗り、颯爽とバンコクの街を走り抜ける。信号は無視。当たらなければ良いらしい。僕は手荷物が少なかったけど、Jはでかいキャリーバッグを肩に担いでなかなかバンコクに馴染んでいた。こういった移動をしてなかったので、スリル満点、かなり楽しい。

 

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駅に到着してしばらくすると電車が来た。この調子だと17時半には空港に着く。なんとかなりそうだ。

 


空港に着いてチェックインを済ませ、荷物を預け、搭乗口に向かう。途中ヤバめなモニュメントがあり、写真撮っていくくらいの時間の余裕もあった。

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よく、「2時間前には空港に到着しておいた方がいい。」なんていうけど、全然そんなこと無さそうだ。20分くらい前に着けば充分だと学んだ。

 


振り返ると刺激的であまりにも長いバンコク滞在だった。これで旅行終わりで日本に帰るとなっても充分なくらいの密度。これから旅は始まったばかりだということが信じられずにいた。バンコクの思い出とインドへの期待を乗せた飛行機はバンコクの地から飛び立った。

 


という感じで、つづく。