しらぼ、

松本真青がSFを書くとこうなる。

詐欺は人を傷つける

 

彼は深く、深く傷ついていた。

顔は憎しみの重圧に耐えかねたように醜く歪んでいた。血の気の失せた青白い頬と対照的な赤く煮え滾る充血した目はあまりに悲惨だった。小刻みに肩を震わせながら、彼は、神に命乞いをするかのように静かに、しかし力強く、僕に言った。

 

「俺は…騙されたんだ。」

 


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昨今、詐欺が多発している。
「日本は詐欺大国だ。」と感じている人が多いかもしれない。昨今のオレオレ詐欺や特殊詐欺は厳罰化が進む中で被害総額は一向に減らない。


平成20年頃から盛んになったオレオレ詐欺や特殊詐欺。しかし、詐欺認知件数と人口比率で計算すると、詐欺大国と呼べるのはむしろ韓国だ。
日本に比べ偽証罪の件数は66倍、人口比では165倍になる。「韓国人は息を吐くように嘘をつく」という衝撃的な書き出しで書かれた記事がビジネスジャーナルにも掲載されている程だ。日本はそれに比べるとまだ比較的少ない。

なぜ、韓国でこれだけ詐欺が横行するのか。世界的にも韓国は稀な学歴社会でプレッシャーからか自殺する若者が後を絶たないこと、評価基準が人より劣っているかどうか、ということである為、人を蹴落としてでも自分が上に行かなければならない社会であると分析されている。また、学歴社会、世帯の所得差、国そのものの貧困によってそれはエスカレートしていく。

 

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彼は騙されたと自分で口にすることで、騙されたことを認めたからか、怒りや悲しみを通り越して、虚しさだけが残っているかのように見えた。

僕は何も言えなかった。

この彼を前にして、「大丈夫だよ。」なんて容易い言葉は決して口にしてはいけないようだった。沈黙が続いた。ブラインドのついた窓から空を見ると、いまにも降りだしてきそうな雨雲が渦を巻いてそこにただずんでいた。それは目の前の彼と対象的だった。

あまりに気まずい雰囲気に僕は耐えかねて、質問することにした。そもそも何があったのか。誰に、何を騙されたのか。そこを聞かずにして、彼の内面を慮ることは到底不可能だと感じたからだ。

 

彼はおもむろに語りだした。

 


彼はとある夜、したたかに酒を呑んでいた。いま取り扱っている仕事が上手くいかず、ストレスが溜まっていたのか、いつもよりも多く酒を呑んでいた。月夜の明るい夜だった。

ふといつもの職場の帰り道と違う道を歩いてみた。いつもの帰り道では、いつもの光景しかない。それはある意味彼の仕事や一生を表しているかの様な、現実を見せつけられているかの様な、そんな気がしたのだ。変わりたい。違う道を歩いてみれば、何かが変わるかもしれない。そんな、藁にもすがる思いだった。

人は普段なら騙されたりはしない。この時の彼の様に、衰弱して、心に隙が出来た時に騙されるのだろう。

違う道を歩いていくと、見知らぬ男が近づいてきた。「お兄さん、いい話があるんですよ。」全く見知らぬ男。背は低く、無精髭を生やしていたが、不思議と心に響くいい声をしていた。

普段なら、間違いなく無視する相手だが、彼は非日常に飢えていた。話を聞くことにした。どうやら商談のようだった。酔っていたが、それなりに話は理解できる。

商品だか何かを見て、買うかどうかの話なのだろう。若干、訝しげな感覚になったが、「とにかく見てから判断してくれればいい。」と男に言われた。見て判断してダメならば帰っても良いとのことだった。それなら、大丈夫だろう。

彼は無精髭の男の案内する先について行った。汚いビルの入り口に地下に続く階段があった。無精髭の男はそこを勝手知ったる場所のように降りていく。

階段は薄暗く、月の光を避けるように、奥に行くほど暗かった。この無精髭の男はどこに連れて行く気なのか。天国なのか、地獄なのか…

 

 


彼はここまで話したところで、よほど記憶を思い返して不快感が達したのだろうか、いきなり片隅に寄りかかって吐瀉物を地面に叩きつけた。

2、3度叩きつけると、少し落ち着きを取り戻したように息を大きく吐きながら言った。

 

「はぁ、すまない、いきなり吐いてしまって。」


「いいえ、いいんですよ。」

僕は努めて優しくそう答えた。

 

 

 

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先程、韓国が如何に詐欺事件が多いか告げた。では、日本は詐欺は大した問題ではないじゃないか。と感じるかもしれないが待ってほしい。何故なら、韓国の様な学歴社会、世帯所得差については日本も危惧すべき問題で、日本での詐欺事件の多発にも大きく関わってきているのだ。

オレオレ詐欺がこんな短期的に流行しているのは、日本固有の現象で、諸外国だったらここに銃と血が入ってくる。クーデターやデモが起こる。少なくとも日本では階層間の憎悪は貧困差によって出来上がる。

詐欺やオレオレ詐欺の基本的なターゲットは高齢者や高所得者だ。当然ながら低所得者を騙してお金を取るよりも高所得者から騙してお金を取る方が効率がいい。しかし単にそれだけではない。そういったターゲットを恨む社会になっているのだ。

低所得者高所得者が対立している社会。詐欺グループなどは元々暴力団組織や、無職の人などの烏合の衆といった人たちが犯行を行ってきていたのだが、現在ではあらゆる企業を勤め上げた人間や、大学卒業後にまともな就職にありつけない人たちまでが参加してきている。

苦労して勉強して、多額の奨学金を受けたのにも関わらず、ろくな仕事にありつけない。待っているのはブラック企業と利息のついた奨学金の返済だ。そんな時、人は社会や高所得者を恨む。そういった社会人が次々と詐欺グループに参加して、社会に反抗を示していく。

実際に、「日本社会の経済が発展しないのは高齢者が資産を溜め込んで流通させないからだ。」と謳う詐欺グループ内のセミナーも存在する。

事実お金が流通しないと経済が発展しないが、詐欺によって搾取する事の肯定にはならないのだけど、そこに賛同する人は大勢だ。

 

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県警の詐欺事件認知件数自体は減っているが、被害総額自体はおよそ倍に増えている。ここからみても分かる通り、被害者が高所得者であり、加害者は犯行能力の高いグループなのが分かる。

韓国の二の足を踏まない為にも、貧困差を軽減させたり、所得差で恨み合うことのない社会をこれからの日本は目指さなければならない。そしてなにより、詐欺にあった人間は傷ついているのだ。

 


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僕は彼が少し落ち着きを取り戻したのを見計らって聞いた。

「その先に何があったんですか?」


彼は引きつったような笑い方をしながら、ぶっきらぼうに答えた。

 

 

 

 

「風俗店のパネルの写真で指名した女の子が、実物と全く違った。あれは詐欺だ。」