しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

パブロフの犬



声を大にして言いたい。僕は白衣が大好きだ。

むしろ、大好きだ!と、エクスクラメーションマークを付けて良いくらいだ。

今回は決して、丸美が以前難病にかかってしまい、余命宣告を受けて泣き崩れる丸美の側で僕はただ棒のように突っ立っていることしかできない、無力な人間だったのだと思い知ったのだけれど、そこで丸美の担当医の熱心な治療のおかげで少しずつ回復し、遂には完治、まさに奇跡としか言いようのないときに、丸美の担当医に泣きながら礼を言うと、担当医はフッ、と鼻で笑い「私はただ仕事を全うしただけです。礼には及びません。」と呟きながら病棟の廊下を歩きだしたときの担当医の背中が、というか白衣がカッコいいから白衣が好きなんです。っていうお涙ちょうだい的な話では無い。AVの病院の企画ものの話だ。


僕たち人間が生きていく上では、食事や睡眠、運動は欠かせない。バランスの良い食事は健康を保ち、適度な睡眠が疲れを癒し、快適な運動でストレスを発散させる。

そしてもう一つ必要なものがAVだ。それも動画まで到底たどり着けない悪質なサイトではなく、XVIDEOだとなお良い。適度な観賞で人生は豊かになる。というのが僕の自論だが、そのうち何処かの国の学者が公式に発表する日も近い。


とまあそんな訳で意識高い系の僕はモリモリとAVを観賞するのだけれど、そのAVの中でも一時期、白衣にはまり込んでいた。銭湯大乱闘とか、謝礼が出ますとかそっちのけで白衣もの一点集中で観ていた。





ピリリリリリ。呼び出し音がなった。
受付の壁に掛けられたボードを見る。5号室。
丸美の担当の病室のパネルが赤く点滅していた。

またこの患者さんか…

私の苦労を誰かに気づいてほしい。

そんな気持ちがより一層大きいため息になって丸美の口から出てきた。

だけどもこんな小さい病院には夜間何人もナースが待機できるはずも無い。それに今はGWの真っ只中。緊急対応の医者すら居ない。
丸美は一人でこの夜の夜勤を務めていた。

薄暗い廊下を抜けて5号室に入る。
5号室の集団病室の奥の窓側。患者のオオタケが入院している。

「オオタケさん~、どうされましたか~??」

「いやぁ、ナースさん、なんだか眠れないんです。」

「ダメですよ~静かにしないと、部屋の他の患者さんが起きちゃいますよ?」

この患者、子供じみたことを言う。だけども目は丸美の顔と胸を交互に見ていて、完全にいやらしいことを考えているのは丸美にも十分伝わってきた。

冗談じゃない。なんて気持ち悪い目。

そう言ってやりたいのだけれど、仕事だと思いグッと我慢する。

「ナースさん、眠れないんですよ~、隣で一緒に寝てくれませんか?」








(中略)







「ダメですよ~静かにしないと、部屋の他の患者さんが起きちゃいますよ?」



オオタケに注意される。
だけども丸美は堪えきれずに声をあげてしまう。オオタケの身体に跨がり、腰を振り続ける。はだけた白衣。いやらしい音が股間から聴こえてくる。


オオタケの顔を見る。なんて嫌らしい、汚い顔。だけどそんな男と行為をしている私はもっと、嫌らしくて、汚い女。


ベッドが軋む音、荒い息、そして喘ぐ声。深夜の病院の暗闇に響き続けていた…








みたいな作品とか、もう堪らない。勃起ものだ。
1日3回くらい見れるんじゃないかって気になってしまう。



他にも、丸美がその後の職場のストレスで暴飲暴食に奔り、胃腸内科に診察にいくと、そこの院長がまた嫌らしい目で丸美を見てきて、じゃあ診察始めますってなって補聴器で胸とかつついちゃって、丸美が、思わず喘いじゃったら院長が「おや、様子がおかしいですね?」ってことになって集中治療室…院長絶好調。なんて展開も堪らない。(はあはあ)




そんな、AV観賞を繰り返していたある日、僕は胃腸の不調を訴え、胃腸内科に赴いた。

原因は過度の暴飲暴食や睡眠不足などだった。そんなことはこの際どうでもいい。

なにが問題かというと、受付の人や病院の先生を見る度に、僕は勃起していた。

そしてそれは橋下マナミ似のナースだったわけでもなく、ただの白衣を着た一辺の曇りのないブスだし、先生に至ってはオッサンだ。

全然性欲の対象なんかじゃなかった。


謎に包まれたまま股間を手で抑えながら診察を終え、病院を後にした。


一抹の不安を抱えたまま数日を過ごしたある日、ふと友人Kにこの出来事を話してみた。


友人Kは答えた。それはパブロフの犬だ、と。




全然意味が分からない。

そう尋ねたものの、「まぁ自分で調べてみればいいさ。」とだけ答えて、友人Kは帰っていった。


で、気になったもんだからパブロフの犬でググッたら、犬を利用した条件反射の実験らしい。


犬の口に唾液の分泌量を測定する器械を着けて、毎回ベルを鳴らしてから餌を与えると、犬は次第にベルが鳴るだけで涎を垂らすようになったらしい。

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なるほど、友達Kが僕に言ったのはそういうことだったのか。と理解した。


つまりは僕は白衣を着た登場人物ばかり出てくるAVばかり観賞しているものだから、白衣を見ただけで、条件反射で勃起してしまうということだ。

いや、それはさすがにないだろう。

そもそも、犬が腹を空かせることと一緒にされては腹がたつ。

僕の人格を否定されているみたいだ。

ちくしょう。


余計に腹が立ってきて、いったいどんな人がこんな実験をしたのかなと思ってパブロフさんを調べた。

ロシアの生物学者のイワン・ペトローヴィチ・パブロフさんという写真がでてきて、白衣を着ていた。









勃起した。