しらぼ、

松本まさはるがSFを書くとこうなる。

目が覚めると密室でした。前編 過去記事




これは嘘のような本当の話である。






最近、酒をのむと記憶がとんでしまう。

どうにかこうにか器用に
家まで帰ってきているのだけれど
記憶が曖昧なのである。



おそらく帰りはしっかりしているのだけれど寝ると忘れるのかもしれない。

渡り鳥がなんとなく何万キロと飛んだり
シャケが命がけでなんとなく激流をのぼったり、それとなんとなく似ている。



人間の生き方なんて惰性だ

心臓がなぜ動くのか

なぜ受験して就職してるのか

分かったふりをしているだけで
だれもわかっちゃいない。

ただ流れるままに本能のままに生きてる。

知ったかぶりがうまいことを
世の中は大人と呼んでいる気がする

前フリが長くなったので話をもどす。


前フリが長いと趣旨がつたわらないし
基本的に嫌われる。

小学校の遠足前に長々とスピーチしている校長は全児童の虚ろな目や疎ましげな視線の中でもスピーチをする。あのスピーチは誰に向かっているのだろう
晴天の云々、楽しく云々、学習の一環云々
児童だろうか保護者だろうか教員だろうか
いや、きっと校長自身に向けているのだろう

前フリが長くなったので話をもどす。








つまり

呑んで

呑んで


呑んで


とんで


とんで


とんで

朝の目覚ましで目が覚めた月曜の朝5時

洋服も昨夜着たまま寝ている

大きくのびをして

大きくあくびする

昨夜酔ったものの早く床に就いたので
寝起きも良いし二日酔いもない
最高の朝だ!!!!


good morning!!!!






布団を出ると部屋はひんやりと冷たいが
なにせ気分が良いのでそれさえも心地よい。

作業服に着替え顔を洗い
コンタクトをつけようとするとケースに入っていない。気づけばコンタクトもつけたまま寝ていたようである。

鏡でみると眼球にコンタクトがついている

まあそんなこともどうでもいい
なにせ気分が良いのだ
部屋のカーテンを開き、窓をあけた
すうっと冷たい外の空気が部屋の中に流れ込む

まるで風そのものも寒い外から暖かい部屋の中に入りたかったかのようだ


朝5時過ぎの東京の空はまだ薄暗い。




空をみるのは大好きだ




このまま背中に翼が生えて


この窓から飛びたっていけたら


なんと素敵なのだろう。



そんなことをぼんやりと思いながら
ふと時計をみると5時半になっている。



そろそろいかなければ
工具と安全帯をいれたリュックをからって(背負って)




部屋をで、





























出れない!!!!!!!








ドアノブをまわしてもドアのロックが動かずドアノブだけが空回りしてしまう。

回らない!!!

ななななんてこった!

齢21になったけれども
こんな試練は初である。



まだまだ若いからだろうか
年を重ねて経験をつめばどんな困難にも
焦ることなどないのだろうか
ドアノブの一つや二つ回らなくても
鼻でふふんと笑ってしまえるのだろうか


そう思って鼻でふふんと笑おうとしたが
衝撃的すぎて鼻がひきつってしまう

ああ。私は未熟者だ。


とりあえず仕事に行かないとまずいので
なんどもなんどもドアノブをまわしまくる。

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ひらけ!






ひらけ!






ひらけ!
いいやこれじゃ駄目だ。
と、いったん手をとめる
何事も焦りは禁物だと昔からいうではないか。

まえに読んだ吉川◯治の三国志
スーパースター諸葛亮孔明だって
常に冷静を保っていた

何のために常日頃読書しているのだ
本から得た知識はいかさねばならんぞと
自分を叱咤した。


お願いします開いてくださいドアノブさん
と祈ってドアノブをまわしたが
ドアノブさんは心を開かず扉も開かず

そしてまた自分の過ちに気づく
そうだ何かを頼むときや願うときには
心から切に願わなければならないし
感謝の心を持たなければならないんだ
まずは目前のトラブルに対するイライラや
仕事に早く行かなければならない不安
様々な煩悩を体から削ぎ落としていく。
トルコのケバブのように

何も考えず、無になる。
何も考えないとか無になるのは意外と得意である。

しばらくすると

フッと体が心なしか軽くなった感じがする
ケバブが削ぎ落とされたのだ。


よしこれでいい。

そして感謝の気持ちを持つこと。
自らの命があること。

そして今までに関わったすべての人
両親、家族、友人、恋人。

会社の仲間からコンビニの店員まで。

今まで食べてきたたべもの
動物、魚、野菜。
そして身の回りのすべてのもの
家具、家電、ドアノブ。







ありがとう。










心からそう思うと、なんだか目頭が熱くなった。



その瞬間!



素敵なアイデアが脳裏に浮かんだ。

ウソップ寓話の北風と太陽を
皆さんはご存知だろうか

旅行者の上着を脱がせたのは
突風を浴びせるのではなく
暖かい太陽の日差しだった。
強引な手段ではなくあくまでも
任意であることが大事なのだ。

ちなみに北風さんと太陽さんが競ったら
圧倒的なエネルギー量の差もあるし
北風さんは突風浴びせるしかないんだから
フェアじゃないなと思うのだけれど
今回の話には関係ないので伏せておく。

素敵なアイデアというのはやはり
無心になって感謝の気持ちを持ってはじめて生まれてくるのだろう。



そうだ。よくいうではないか。

押して駄目ならひいてみろ!って。



ドアノブに手をかけ引いてみた。






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とれた








こうして私は
東京のど真ん中の一室で
脱出不可能の密室に閉じ込められた。




続く!!



2013年10月投稿記事