2022年、8月3日。06時50分。 ファミリーマートの自動ドアを出た途端に襲いかかる熱波。吹き出る汗。真夏の歌舞伎町は朝から暑かった。 東横の凄惨な景色を眺めながら角ハイのプルタブを捻る。 皆が皆、思い思いの格好で寝ている。こんなことができるのはある…
ドラマや映画、小説に貴方は何を求めるか? 息詰まるアクション?謎が謎を呼ぶミステリー? 僕はノンフィクションが好きだ。人間の本質が窺えるような、人間讃歌の作品。平凡で単調な人生を送る人なんてほぼいなくて、誰しもが掘り下げてみると悩みと絶望と…
パンツに穴が開いた。 それはまるで最初から決められていたかのように、そこに穴があった。 用を足す時にパンツを膝のところまで下げた時に私は見つけた。 直径4センチほどの穴。 あぁ。開いてしまった。穴が。 私はつぶやいた。 直径4センチの穴。 すぐに履…
残暑とは ショートパンツの 老人よ 1957年の俳句文芸句集に載せられた星野立子の俳句である。残暑のどの辺がショートパンツで、何が老人なのかさっぱりだが、彼女にとってそれが残暑なのだろう。まぁ、ショートパンツの老人みたいに残暑も嫌だってことなのだ…
走馬灯が見えた、なんて表現がある。死にそうな思いをした時に見るやつだ。 元々は回り灯籠とも呼ばれ、影絵が回転しながら写るように仕掛けが細工された江戸中期頃の灯籠のことだ。 走馬灯が起こる原因は、人は死の危険に直面すると、助かりたい一心でなん…
ガソリンが181円になったり、正社員がリストラに遭ったり、非正規雇用がまかり通ったり、空前絶後の円安で世はまさに世紀末。今回はそんなSFみたいな時代のお話。 2月の東京。港区。 ビル風がダウンジャケットの中にまで忍び込む。通りを歩く人々が少しでも…
当初の開花宣言より早まった東京では、至る所にソメイヨシノが街に彩りを添えていた。歩く人々も足を止めては、その美しさに魅了されている。 日曜日の夕方。少し風が冷たいせいか、いつもより早足で僕はいつものビルに入る。 アルファベット一文字だけ書か…
都内某所。日差しが肌に突き刺さる。蝉の鳴き声は聞こえなかった。 いつもの場所に行き、いつものインターホンを押す。会員制のハプニングバー。外観からはどう見ても分からない。この秘密基地感が好きなんだと常連の一人が言っていたことを思い出す。 中か…
1月3日。8時40分。 東萩駅から電車が走り出す。益田駅で一度乗り換え後、米子駅まで一気に目指す。およそ6時間程乗り続け、54駅を移動する。この日に連れが飛行機で米子に来るとのことだったので、出雲は後日行く為スルーする。 昨日の灰色の日本海とはうっ…
「ここからすぐ近くなんです。」 スタスタと歩く信雄さん。もう78歳なのにあれだけ呑んでこれだけ歩けりゃ元気だな。と背中を見ながら感心した。 2分程歩くと、すぐに信雄さんの実家に着いた。 「ここです。」 と言って信雄さんが入った家は、なんとも立派な…
頼むっ、頼む頼む頼む、、、 ぐわぁー!! 揺れる静かな電車の中で男がもがき苦しんでいた。こんな正月からこの時間に電車に乗るような酔狂な人は他におらず、この男1人だった。 長門駅から東萩駅までの道中、YouTube LIVEで競輪中継を観ながら更に賭け続けたこ…
大西洋はさわやかなブルー。日本海は淀んだ灰色。そんなイメージ通りの海の表情をひたすら眺めていた。千切れた雲の隙間からオレンジの光が隙間を縫うように流れている。日本海沿いの景色をひたすらに眺めることのできる山陰本線の線路を轢いた人のセンスの…
1月1日、15:30。熊本空港に着いた。 元旦初日っていつも飛行機が安い。やっぱり年越し前にはみんな帰郷して、一緒に年越しイベントをこなしているのだろう。集団行動が苦手な僕みたいなのが、こうやって元旦の飛行機に乗るのだ。 地元の熊本県は抜群にアクセ…
年が明けた。 2021年はコロナでワクチン打ったり知り合いが違うワクチン打っちゃったりオリンピックだったりと変化の多い一年だったが、僕といえば淡々と夢の国に通っては夢のない仕事を続け、家に帰ってはYouTubeやらNetflixやら Xvideoやらを廻し観るくら…
6月も半ばに入ると本格的な蒸し暑さが始まった。 僕が住んでいる舞浜は海も近く、熱と湿気を帯びた海風が東京湾から漂ってくる。 都内よりも一段と不快指数が高いだろう。ジメジメって形容詞がピッタリすぎる。 こんな辺鄙な町にもう2年以上も住んでしまった…
おっぱいの形の雲が浮かんだ空を見て、夏の終わりを知った。 という始まりの文章だけがメモとして残っていた。 携帯のメモ機能ってのは、まぁとても便利なモノだよね。皆さんはどのように使っているだろうか。僕の場合は、本や広告にあるグッとくる文章をメ…
『ポケモンマスターに、俺はなる!』 というセリフでお馴染みの大人気ゲーム『ポケットモンスター』の新情報が2月27日、ポケモン公式YouTubeチャンネルで発表。 2006年9月に発売されたニンテンドーDS用ソフト「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」の…
「僕はあいみょんを抱けない。」 日曜日。曇り空。昼の居酒屋。少し薄暗い店内にまばらな客。その中に僕の声明が響いた。 人生において何の接点もない老若男女がこの居酒屋にランダムに集い、そして僕の「あいみょん」を「抱けない」という声が鼓膜を伝い、…
1月6日。 西成の光と闇をずいぶんと満喫したこの数日を振り返りながら目が覚めた。今日も二日酔い。鉄格子がクネクネと、砂漠の陽炎のようにうねるのをみながら、あぁ、昨日も飲み過ぎた。と後悔の念が押し寄せた。 もう正月も明けてしまった。 朝6時。外に…
「おうー!あんちゃんマルフクにおったやん!!」 はまちゃんの声はボリューム調整のつまみが壊れたラジオみたいなデカさだ。とりあえず僕のピンクジャケットではまちゃんも僕のことを思い出してくれたらしい。ぼくとはまちゃんの意外な関係性を知った東さん…
軽い頭痛にうなされながら寝返りをうった。いまの夢はなんだ??知らないおっさんが舌を出している。ぼんやりと目を開ける。一瞬、ここはどこだ?となったのだが、昨日の出来事を思い出し、そしてドヤにたどり着いて倒れ込むように寝たことを思い出した。 窓…
1月5日。深夜0時を回った。 西成の街はどこかしこもシャッターを閉ざし、眠りについていた。その街の街頭の下を、赤い頭とピンクの服がうごめく。 「この辺の飲み屋さんは面白いですよー。ま、私は行ったことないんですがね。」 ヨネさんは行ったこともない…
少しずつ、空が白んできた。 銀色を帯びた雲が風で流れつつ、新しい一日の始まりを日の出が教えてくれた。 僕は結局どこのホテルにも泊まるつもりはなく、その辺の路上の脇に寝袋をひいて寝た。もちろん、地面に体温を奪われないようにマットは持参していた…
23時33分。 涙を流しながら見える車窓からの景色は、漆黒の闇だけだったが、車内のアナウンスで流れた「広島」というワードが僕の心に小さなともしびを滾らせた。次第に漆黒の中に点々と灯りが見え始め、車両はホームに流れ着いた。広島だ。 閑散としたホー…
後悔はしたくない。その一心だった。荷物をそそくさとまとめ、駅に出た。ここからの乗客は居ないのか、すぐさま走り出す電車。ホームには3人の影が取り残された。その時、ユウキは言った。 「まっ、さっきの話、ウソなんだけどな。」 「う、ウソだと?マジか…
1月3日。午前11時。 元日に熊本に到着してからは、地元の友人と会っては酒を呑み、と楽しい2日間を過ごし、そしていま、僕は西熊本駅に着いた。無人の改札を抜けてホームに出る。冷たい風が肌を刺すが、正月らしい快晴。なんてめでたいんだ。こんな日にまさ…
年が明けた。 2020年、1月1日。令和に改元されてから初めての正月。世の中は浮かれていた。そして当然、浮かれて軽トラとかひっくり返しちゃう渋谷の街も浮かれていて、そこに住むイカれた住人も浮かれていて、この僕も相当に浮かれきっていた。 毎年のこの…
ここまでの旅を読みたい人はこちら↓ 印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語1 - しらぼ、 印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語2 - しらぼ、 印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語3 - しらぼ、 印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バ…
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