しらぼ、

松本真青がSFを書くとこうなる。

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語3

 

 

そろそろアグラにつくよっ!

 


そう相席の夫婦に呼ばれて、ボンヤリとした意識のまま目を覚ました。

約2時間半程、距離で200キロほどの道を進んできた。

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  200キロはだいぶ進んだなぁ、と思ったが、Googleで見ると全然まだだった。左上の黄色ピンがニューデリー、小さい赤ピンがアグラ、そして我々のゴールであるコルカタ空港は画像右端の赤ピン。その距離1470キロ。

 


日本の距離で例えるなら茨城県から鹿児島市まで山陽高速を使って1470キロ。200キロだと茨城から熱海くらいだ。まだちょっとしか進んでいない。

 

慣れ親しんだ列車とも別れを告げ、僕達はホームに降りた。すっかりあたりは暗い。夜の11時。今回は予算を考えて、アゴダのアプリを利用して宿の予約を済ませておいた。時間は焦らなくても良かった。

 


ホームには沢山の猿。間違えて上野動物園に来てしまったのかと思ったけれど、猿があまりにも野性味溢れていて、日本で見る猿達とは別格なのだとすぐ分かる。

長いホームを歩き、階段、通路を抜けて改札口へ。もちろん改札でPASMOとかSuicaとかはない。特に券も確認されない。全然無賃でいけそうだ。

 


外には毎度おなじみのバイタクとかリキシャが数台。我先にとインド人達が僕らに向かってガンガンに喋ってくるが、唾が飛び交い過ぎて汚かった。

 


とりあえず一番チープな奴にする!との話し合いの末、1人のおっさんのバイタクに乗り込んだ。

 


Googleマップのスクショをおっさんに見せて、ここが分かるか?と聞く。マトモに見てないまま、オーケーオーケー。と答えておっさんはアクセルを踏む。もう、なるようになるさ。

 

 

 

数十分程、砂埃を吸い込み、クラクションの喧騒を聞きながら進んで行くと、本日の宿に到着。

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正面はすごく立派な感じだが、側面は塗装も何もない。びんぼっちゃまみたいなツーリストハウスだ。3人一部屋で800ルピー。安い。中庭のある造りで清潔感もよし。インドに旅行に来たら是非ここに泊まってほしい。名前知らんけど。

 

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朝買ったノンアルコールビールがここで初めて役に立つ。皆で吸って気持ちよーく就寝。ちなみにこのころ日本ではハロウィンで軽トラックがひっくり返ったりしてニュースで話題になっていた頃だ。ハロウィンを微塵も感じさせない国、それがインド。

 

10月29日 月曜日

 


誰ともなく、ごそごそと起き出す。快眠。天井にファンがあるから暑さも無く快適なのだが、いかんせん根元が今にも外れそうなくらいボロくて、いつ高速回転ファンが僕らに落ちて来てミンチにされるか分からないのが怖かった。

 


まだ時間は朝の10時ごろだが、世界遺産のタージマハルを見るためにも今日は早起き。荷物をまとめながらみんなで一服。いや、三服くらいした。

マンチになったゾンビ達3人は表の中庭に。もうお腹空いて空いて仕方ない。炒飯みたいなのとサンドイッチとナンのついたカレーとチャイを頼む。

待つ間はまたみんなでトランプ。

空腹を感じながらトランプで笑いが止まらない。最高なひと時。

宿の主人もこういった手練れ供はおそらく何度も会っているらしく、慣れた手つきでキチガイな量の料理を運ぶ。

ひたすらにかき込む3人。かなり美味かった。

うろ覚えだけど会計が2400ルピーくらいで宿の三倍くらいになっていた。

 


お腹を満たした僕らは早速タージマハルへ向かう。

 

 

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タージマハルに近づくにつれ、道の舗装も綺麗になってきている。さすが世界遺産

 

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赤土とレンガで作られたこちらはアグラ城。写真だとわかりにくいが、こちらもなかなかデカい。更に道を進んでいく。

 

入場チケットを買い、ガイドを雇う。本当ならガイドなんてつけたくないが、あまり時間に余裕のある旅ではない。時短と撮影と解説を聞く為、同行してもらう。

 


荷物を預ける場所に着くと、そこには長蛇の列が。おそらく何時間も待たされるであろうと覚悟したが、なんとガイドが付いているので列に並ばなくても預けることができるらしい。ディズニーでいうところのファストパスですか!

ガイド雇って良かったーって思ったけど、入り口の混雑を力づくで通り抜けただけなので、絶対にガイド関係ない。荷物を預けていざ、タージマハル!

 

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J君の友人の結婚式メッセージとして日本語を喋らせる。ガイド料払ってるんだからこれくらいしろよっ!て感じだ。なかなか流暢な日本語。

 

 

 

タージを存分にマハルした僕らは荷物をまた取りに戻った。預かりチケットを渡して出ようととすると、T君にストップがかけられた。

 


どうやら僕がまとめてチケットを渡したから、T君の分まで確認もせずにチケットを破り捨ててしまったらしい。ブチ切れるチケット確認のおっさん。

 


だがここで負ければ理不尽な扱いを受けて警察に行くか、多額のチップを請求されるのは目に見えている。負ける訳にはいかない。怒鳴り散らして対抗する僕達。

 


30分ほどの戦いの末、もう好きにしろと言わんばかりの態度になったおっさんを横目に睨みながら、僕達は荷物預かり所を去った。

 


バイタクの場所に戻ると、運転手は巻きタバコを吸いながら僕達を待っていた。臭いを嗅いでわかった。絶対これガンジャやな。

 


バイタクに乗り込み、お腹が空いたと言うと、運転手は巻きタバコ吸いながら、それなら美味い飯のあるレストランがあるよ。と答えてくれた。きっと彼もマンチなのだろう。ハンドルを切る動きが大層鈍くなっていたのが心配だったが、無事に僕達を乗せてレストランにたどり着いた。交渉の末、僕達がレストランで食事している間にガンジャ仕入れて来てくれるらしい。

 


僕達はレストランに入った。

キンッキンに冷えたビール。

旨味のあるカレーとバターライス。

香草と練ったカバブ

どれもが僕達を幸せにしてくれた。

 


お腹いっぱい食べて、1人3000ルピー。やはり原因はビールが高いからだった。それでも満足したから不満は無かった。僕達はレストランの外でトランスを流しながら牛を見ながら、ひたすらに運転手とガンジャが来るのを待った。

 

ナイスなフォト。

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そしてトランスと牛。

 

 

 

遠くからバイタクのエンジン音が聴こえてきた。眺めると見覚えのある運転手。ようやく戻ってきてくれた。

袋に無造作に詰められたガンジャはかなりの量だった。金額は忘れたが、エアロシティーよりも破格に安かった。

一本巻いて、みんなで回す。

 


牛が鳴いた。

のそのそと動いている。

もうすぐ、日が沈む。

 

 

 

 

 

僕らは移動しなければならない。

あまり時間に余裕が無かった。

 


キャリーバッグなどの大きい荷物をツーリストハウスに取りに行く。

列車の券は取れるのか、宿の主人に聞くと、もう当日の券は無い。とのことだった。ふっかけてるのかもしれないが、パソコンのモニターを見る限りでは本当に当日では取れないらしい。あと一泊すれば良いよ。とも言われたが、断った。そんな時間に余裕はない。

 


バイタクの運転手に聞くと、それならバスで行けばいい。と答えた。バスならまだ空きもあるだろうし、値段も安いよ。とのことだった。すぐさま決めて、バスのチケット販売店に行った。

 


1人600ルピーくらいだったと思う。

それで次の街バラナシまで行ってくれるそうだ。たしかに安い。どんなバスかもわからないが、もうなるようになるさ。

 

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わりとちゃんとしたバス。当たりだ。

餌を求めた動物がウヨウヨと集まってきていた。

 

中に入る。どうやら2人一間と1人一間で別れるらしい。中めっちゃ狭い。絶対にホモっぽいから1人で寝たい!!

僕らは拳を振るいながらジャンケンをした。

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結果、負けた。

僕とJ君が同じ一間になった。畳一畳分くらいのスペースに荷物を足元に置き、身体を寄せ合いながら横になった。足元のモニターは誰かが蹴破ったのか、バリバリに割れていた。足を伸ばすと確実に刺さる。

 


これマジかよ。これで朝までかよ。そう思ったとき、バスがエンジンをかけ、動きだした。けたたましいクラクションを連発し、ひっくり返る!と思うくらいのGを身体中で感じながら、

僕達の旅はまだまだ続いた。

 

 

 

つづく。

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語2


10月27日22時過ぎに僕らのタイ航空はインディラ・ガンディー空港に到着した。外に出ることなく通路に入っていくので暑さはよくわからない。

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かなり長い通路を抜けて、今回の旅の難所、アライバルビザの発行へ。

 


もともと日本でインド大使館に行ってクソみたいな手間のかかるビザの取得を済ませてからじゃないといけなかったのが、昨年?あたりから現地でそのままビザがとれるようになったらしい。そんなアライバルビザは日本人くらいが恩恵を受けられるらしく、なんだ、インドいいやつやんっ。ってなった。

 


ビザを取得して手荷物のベルトコンベアの列に行くと、僕たちだけ遅かったからか、J君のトランクとT君のバックはすでに床に転がっていた。誰かが持って行って盗まれても文句ひとつ言えないセキュリティ。インドの洗礼ってやつですか。

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※実際の写真

 


両替のレートは悪いらしいがよくわらないのでとりあえず2万円くらいをルピーに。それから今夜の宿は空港から隣駅のエアロシティ周辺で探すことにした。

 


トリバゴでなんとなく相場とホテル街の位置は把握していたけれど、もうここは日本でもタイでもない!せっかくインド来たんだからと、現地でホテル探しすることに。

 


1人30ルピー、45円くらいでかなり機嫌の悪いスタッフと睨み合いながらも地下鉄に乗り、10分弱。ようやく僕らはインドの外の空気を吸った。

 


運動場の砂埃みたいな埃っぽい空気。湿気はなく、涼しい。

 

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しばらく大通り沿いに道を進んでいく。環八とか246の横を歩いてるイメージでOK。けたたましいクラクション。黒い排気ガス。ヘッドライトに照らされた乞食の少年少女。

 

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「プリーズマネー」

裾を掴んでどこまでもついてくる子供達。すごい戸惑ってしまったけれど、断り続けた。

 

道路を渡り、ホテル街へ。道路沿いにはいかにも綺麗なホテルが立ち並ぶ。一泊1人3000ルピー。4500円。そんな贅沢な旅をするつもりは全くなかった。

どこも高そうで戸惑っていると、どうやら横道に入った裏路地に入ると安宿が多くあるようだった。

路は電灯もなく、暗闇で、野良犬の目だけが光っている。


何人もの客引きが、BARだのホテルだのと声をかけてくる。ぼったくられるのが関の山。僕らは無視してホテルを当たってみる。木の戸を押すと土壁のような入り口に店主が。照明には見たことない種類の虫が飛び回る。

 


1人500ルピー。店主は言った。

しかし宿が汚すぎて僕ら3人は閉口した。他にもあるだろう。僕らは表に出た。

 


さっきまでの客引きは諦めたのか、1人だけを残して、皆去っていた。

肌は浅黒く、茶髪、他の客引きよりもかなり上手な英語を使ってくるその少年に、なんとなく好印象を持った。

まぁ結局僕は英語全然わからないからJ君とT君に話をしてもらった。なんか割とコスパの良さそうな宿があるらしい。

 


僕らは彼に着いていくと、すぐ近くのホテルを指差し、そして入って行った。

料金は3人一部屋で、1人日本円で800円でいいとのことだった。およそ500ルピーちょい。中を見てから決めよう、と言ったがなんだか勢いでもう決めてしまっていた。もうなるようになるさ。

 


部屋に入る。割と綺麗。

窓際の小型のエアコン、テレビ、ダブルベットが一つ。トイレ、シャワー。申し分なかった。と思ったら早速申し分あった。シャワーの水がめっっちゃ弱い。

 

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マジかよ、ってなったけどやはりこれがインドなのだろう。結構高いテンションで写メを撮った。

 

とりあえず外をぶらぶら歩いてみるか、と思い外へ。来るとき見かけたセブンイレブンに向かった。

 

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中はこんな感じ。インドらしくカレーも売ってある。レッドブルマウンテンデューもあるが、値札が無いので買わないといくらかわからない。夜間には入り口に銃を構えた警察が立っていて、レシートの確認、ボディーチェックが行われる。すごいなぁ、日本なんて夜のセブンの入り口はヤンキーとアル中しかいないのに。

 

 

 

そそくさと買い物を済ませ(みんなレッドブル)表に出るとまたさっきのホテルを教えてくれた少年がいた。すでにT君と意気投合し、めっちゃ仲良くなってる。どうやらガンジャ欲しいか?みたいな話らしい。酒は?と聞くと酒の方がどうやら手に入れるのが難しいらしい。ガンジャ3グラムくらいで1000ルピー。とりあえず買ってみた。ホテルに戻るとホテルのボーイが、俺が巻いてやるよっ!ってなんか粋がってきた。

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水耕ではないので、土がついている。それを丁寧に取り除きながら細かく擦っていく。巻く用の紙もすぐ近くで売っていた。タバコの葉を混ぜて、いざ吸ってみる。マズイ。かなり、マズイ。そういや僕、タバコ吸わないからこれ無理だわ。ってなった。

 


それでも2、3本巻いては吸ってみるとあら不思議!とってもいい気分に。

お酒飲んでるのと同じ感じ。ただ煙っぽくて喉が少し痛い。

「ビールもあるぞ。」とボーイが勧めてきた。中瓶一本250ルピー。裏ルートだからか、高い。が、俄然呑みたい。頼んでしばらくするとキンキンに冷えたビール瓶が出てきた。インド最高やん!結局朝までに4.5本飲んだ。

 


そしてここで日本から持ってきた幻のトランプの登場。実は今回の旅行の前に僕だけ、大阪→神戸→奈良→京都→羽田→タイ→インド というハードな旅になっていて、神戸のオカマBARの名刺をババの代わりにしてババ抜きしたい!と道中ワクワクしながら持ってきたのだ。

 

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笑ったらアウトのルールでババ抜きしていくんだけど、もうみんなバッチリ愉快な気分なので笑いが止まらない。

吸って、飲んで、笑って、気がついたらもう朝の5時だった。最高の夜だ。

 

 

 

10月28日昼の12時ごろ起床。

ションベンみたいな色と勢いのシャワーを浴びて準備を整えたら、外へ。

 

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明るくなってホテルの外観を見るとそのボロさが滲み出ている。韓国旅の時もそうだったけど、夜泊まると翌日見る宿の外観の見すぼらしさに鳥肌が立つ。


話し合いの末、今日の目標はエアロシティから地下鉄でニューデリー。列車の券を買ったらバザーを見に行こう、という流れだ。

翌日の最高の気分もあって、今日もなにかいいことあるかもしれない。そう思った時だ。

 

路上の売店で声をかけてきた。

「ビールがあるぞ」と。

 

インドのお酒事情は、州によっては飲酒が禁じられている。地域によっては合法なところもあるが、販売されてではなく、BARや飲食店などの限られた場所のみだ。それなのに、いま昼間っから売店にビールがあるという。こんな奇跡みたいな話はない!やはりツイているぞ、と思い二本買って400ルピー払った。

 

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ノンアルやないかい!!!

 


ノンアル二本で600円は高すぎるぅぅ。

 

 

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落ちたテンションをエアロシティのマスコットキャラは「どんまいっ」と言ってくれているようだった。

 


再び地下鉄でニューデリーへ!


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ここが都市ニューデリーの駅正面。

バスとタクシーが無造作に走り、その間を人と野良犬が縫うように歩く。

 


カウンターにはどれも長蛇の列があった。ツーリスト用の窓口がどこかにあるはずなんだが…どこだろう??

近くの警官や窓口の人に聞くと皆、

「あっちだぜ!」

って指差すんだけど、それが毎回バラバラで、どうやら皆かなり適当に教えているらしかった。いやきっと、誤解されて違う説明をしているだけなんだ!と信じたかった。

 


途方に暮れ1.2時間。T君が執念の甲斐あってようやくツーリスト用の窓口を見つけてくれた!ありがたや。

 

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どうやら建物を抜け長いプラットフォームを渡り、その先の建物を抜けた先の二階こっそりとあった。絶対わかるか!!こんなもん!!

とまぁ、なんとかアグラ行きの2等列車席を買うことができた。夕方18時30出発の便で1人50ルピー。75円。

 


よし!という感じでこれから電車までの時間は近くのバザーを見に行くことにした。

 

駅からバザーまでは歩いすぐの距離だった。遠回りしたくなくて、路地裏の中を抜けていく。

 

表の通りから一本入ると、ゴミの山だった。混沌。

 

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ゴミの中に住む人。

 


カラスと食べ物のゴミを奪い合う7.8歳の女の子。

 

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衰弱した犬。

 

 


旅の本とかYouTubeとか沢山見てきたけれど、やはり現実に目のあたりにするとレベルが違う。

 


5分程歩いてバザーのメイン通りに出た。なんだか死の淵を垣間見てきたから、バザーの活気はまるで命が漲っている様に感じた。

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数百メートルは続いているであろうこの通りには、ツーリスト用の物がメインで売っていて、衣服、民芸雑貨、とりわけターバンやストールといった生地が沢山売ってあった。

 


J君は一目惚れした黒革の鞭を即購入し、嬉しそうにピシッ、ピシッと降っていた。どういう使い方をするのかが、楽しみだ。

僕は手ブラで来てしまったので、どうしても着替えの服を入れるバックが欲しくて、オッサンから購入。250ルピーだったので120ルピーまで値切ったら、アンタはノーブララザーだよ、と笑っていた。値切ってもぼったくっても、済めば後から文句を言わない。それがこの国の商売の気風なのだろうか。

 

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時刻が迫ってきた。僕らはまだ心残りのあるバザーを後にして駅へ。ホームには座りこんでいつ来るとも分からない列車が来るのをのんびりと待つ人達。


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ちなみにこの光景は日本では日曜日の始発ごろの大江戸線六本木駅でも観れる。

 

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恐らく合っているであろう電車に乗り込む。

向かい合わせの三段シートになっていて、壁に書かれた番号のところにとりあえず座る。すぐにインド人夫婦が相席になり、場所が違う、と言われてしまう。チケットを見せて話をしてみると、どうやら場所はあっているが、相席なので僕らはもちっと詰めて座らないといけないらしい。アグラまで3時間程だから、まぁ仕方ない。

 


それから彼ら夫妻とぼちぼちと話をしてみると案外優しいご夫婦で、降りる場所に着いたら教えてあげるよ、との事だった。

 

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一人分のスペースはこれくらい。

 

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移動販売のカレー。100ルピー。ノンベジで頼んだのでチキンが入っている。ちなみにこれがインドで食べたカレーで三本の指に入る美味さだった。

 

食べ終わったゴミはどうしよう、とあたふたしていると相席の夫婦に、

「窓から投げて捨てるんだよ」

と言われた。これがこの国の国民性ってやつですか。だからゴミが多いんだよ。

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また別のカレーが来たのでこれも買う。150ルピー。3種類のカレーが入ってるけど、全部味が似ていて差がない。全く美味しくなくて、半分くらい残した。

 

 

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寝台の上によじ登って横になる。

車内の喧騒、列車の音、扇風機のカタカタという音。

インドといえばカレー。くらいの知識と、知ったかぶりしていたインド観念を毎日毎瞬覆されながら日本の国についても考えてみたりした。

 


ぼんやりとしながらも、列車は次の街アグラへと走っていく。僕は期待に胸が膨らんだ。

 

続く。

 

 

印度放浪記 ガンジャとカレーと深夜バスの物語1

 

 

 

 

キィ、キィ、ザプン…

 


聴こえるのは櫂の軋む音と小さな波とボートとが微かにぶつかり合う音だけだった。朝6時。岸辺には色とりどりの衣を着た人達が祈り、体を清めながらも、今にも登るであろう日の光を待ち望んでいた。

 


風も穏やかで、ガンジスの水面はまるでCGグラフィックの様に規則的に、そしてゼリーの様に弾力があり、なんとも判別つかない鮮やかな色をしている。

 


根元ギリギリまでガンジャを回して吸った。ゆっくり、息を吐く。煙が空に昇る。景色がかなり鮮明になる。色が濃くなっていく。その時だった。

 

 

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日が昇った。なぜガンジスの人々が神を信じて生きているのか、少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、という訳で今回は10月25日~11月5日までの12日間に及ぶ日本→タイ→インドの放浪の旅の物語。

 

 

 

10月25日、夜の11時、羽田空港国際ターミナル。

これまで何度か海外に行ったことはあるものの、羽田空港から海外に行くのは初めてだった。偶然格安航空券を探していたときに、成田と同じ価格で行きの便だけが羽田発だったので、迷わず選んだ。

 


出発は明日26日の朝10時35分。

んっ?無駄に来るの早くないか?と思った人もいるかもしれないが、それには理由があった。

 


今回の旅は前回の韓国放浪記とは違い、僕と仲間2人を連れた3人での旅。

「J君」と「T君」だ。ほんとはどっちもJだけど、わからなくなるので変えておいた。

 


この2人がなかなかの浮世離れで、時間を守ってくれる保証が全く感じられなかったのもあって、今回は前日から羽田空港乗り込み、そのまま朝まで過ごせば流石に遅れない、と踏んだのだ。

 


ただ、この浮世離れ達が海外でみせてくれるであろう化学反応に僕は期待で胸が高ぶってもいる。

 


1階のLAWSONで酒を買っては飲みを繰り返し、酩酊したら4階のモスバーガーをかぶりつく。車椅子で遊びながら屋上テラスに出る。しばらく日本ともおさらばだ、と思うと、なぜか平凡で星も大して見えない夜空にも愛着がでてくる。

 


4階にある日本橋という橋のデザインの通路の脇で、僕ら3人は眠りについた。一応人に聞かれたら、日本橋に泊まった。と言って良さそうだ。

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10月26日

硬い床が深夜になると更に冷たくもなってしまいなんとも寝心地の悪い夜だった。ただ、前の職場の先輩が「インドならこれ持ってけよ!」とふざけて渡したホッカイロがここでまさかの大活躍を果たし、辛うじて寒さを凌いだ。ただ、夜間の屋内の工事現場がめちゃくちゃうるさくて、ほとんど眠れていない。

 


朝の8時ごろになると、ぞろぞろと仲間達も起き出す。すぐ脇のモスバーガーでコーヒーを啜り、屋上テラスへ。

 


冷たい風が吹き抜けるものの、目が覚めてちょうどいい。T君には欲しそうにしていると思ってクーリッシュのバニラ味をあげた。彼は喜びのあまり涙を滲ませながら美味しそうにクーリッシュを飲んでいた。見ているこっちが寒くなった。

 


チェックインを済ませ、携帯を充電しながら待っていると、10時20分。結構ギリギリな時間に。慌てて手荷物検査をくぐり抜け、早足でゲートへ。こんなに早く来ておいて僕らが一番遅くゲートに着いたらしい。

 

シートの予約もできていなかったけど、3人とも並びだった。スカイチケットの奴ら、上手いことやってくれてたらしい。


時刻通りに機体は動き出し、そして、日本の地を離れていった。


フライト時間、6時間半。時差があるので、タイに到着するのは15時前後。

タイ航空はわりと乗り心地が良い。僕自身、そんなに数多の航空会社に乗った訳じゃないので、あまり参考にはならないだろうが。機内で配られたタオルケットはこの旅先で必要だと思い、ちゃっかり拝借する。


飛行機で暇を持て余すと思って一応本も持ってきたけれど、眠気でヨメズ、されどネレズ、宮沢賢治的な気持ちで結局座席についているモニターで映画を2、3本観た。デッドプールの1.2作と忘れたけどスパイ映画。疲れもあって、とても長く感じた。

 


ようやくタイのスワナムンプール国際空港に到着。機体から降りてバスへ。ムッとする空気。アジア特有の高温多湿で一気に首筋から汗が流れる。それでもテンションが上がったせいか、疲れは吹っ飛んでいた。

 


入国審査を受け、ニコチンの切れた仲間たちはそそくさとタバコを吸いに表へ。それからスワナムンプール空港の電車に乗り込み、バンコク市内の宿を目指す。

タイはトランジット時間を伸ばして立ち寄っているだけなので、インド行きの飛行機は翌日の夕方17時55分。あまり遠くへ観光もいけないので、バンコク市内にあらかじめ宿を取っておき、近場でタイを感じようじゃないか、そらよかタイ、といった感じだ。

 


1時間ほど電車に揺られ、僕らはバンコク市内に到着。ナナという場所で、バンコク市内ではバッポン、ソイスクンビットに並ぶ夜遊び街になっていて、観光地全開の程になっている。移動続きと高温多湿で体の疲労はなかなかのピークを迎え、ホテルに入る。予約を確認して部屋へ。駅へのアクセスと、まぁ初日にタイで乞食宿みたいなところはさすがにいいやと思い、1人あたり1800バーツのホテルに。なかなか快適な宿。

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荷物を置き、シャワーを浴びたらまた元気が出てきた。3人で表へ出た。まずはこの旅に必要な衣服を買わなくては。

外の天気が怪しくなっていて、スコールが来るかな?と思ったけれど、小雨。日本から履いてきた裏面ツルッツルのやっすいスリッパで何度も転びそうになり、死の危険を感じながら近くの店へ。Tシャツやサンダルも数多く売ってあり、僕とJ君は購入。履いていたスリッパはもう要らないのでお店に脱ぎ捨てていった。

 


それからナナプラザで酒を浴びるように飲む。ハイネケン一杯200バーツ。日本円で600円くらいだから日本ともう値段も変わらない。現地の酒でもないので高い。

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酩酊しながら3人移動し、ビリヤードのあるバーへ。

一回250バーツだと聞かされ、高すぎだろと思いつつ二度ほどプレイしていたら、25バーツとの聞き間違いだったと分かった。酒ももう充分だったので、店を出て、通りに見かけたラーメンを食べに行くことにした。

数多の声かけとオカマ達。途中いきなりオカマからちんこ触ってくれって言われて服の上から触ったらめっちゃでかい息子さんだった。せっかく大きいのに、なんてくだらないこと考えてたら1000バーツで寝ない?と聞かれた。ムリっす。

その後も幾度となく襲いかかるオカマを避けながら屋台へ。1人50バーツ。150円。それとソーセージ焼きもあった。一本25バーツ。

野良犬と声かけがうるさかったのでそのまま大通りにでて道端で汁を啜った。味は鳥の出汁がよく出ている春雨ヌードルといった感じ。ネギの臭みがあったけど、かなり美味かった。ただ強烈に辛い。3人揃って汗が滝のように流れた。ソーセージの方は、なんか身体にいかにも悪そうな油の味がするサラミみたいで、僕は受け付けなかった。

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汁を啜りながら目の前の大通りの喧騒を見ていると、スッゲー、アジアだな。と語彙力の無い感想が浮かんだ。

 

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僕らはそれぞれ部屋に戻り、汗をシャワーで流し、眠りについた。

 

 

 

10月27日

起きたのはもう昼の12時ごろだった。

酒をかなり飲んだ割に二日酔いにはなっていなかった。それよりもやっとしっかりとした睡眠が取れたからか、かなり体調は良かった。

 


Tはもうすでに起きていて、部屋に行くと音楽を流しながら気持ち良さそうに朝の一服。Jはまだ寝ているかもしれなかった。あまり遅くなってしまうと、飛行機の時間が迫ってしまうので、早いうちにチェックアウトしてもう少し、バンコクでぶらぶらとしたかった。そんな時、T君が僕に言った。

 

「あの、お金ないんで借りていいですか?」

 

最初聞いた時、んっ?ってなった。何を言っているのかな?と。聞いてみるとどうやら旅費をもう全部使ったらしい。驚きを通り越して笑いしか出てこなかった。さすが、T君。彼を見ていると、自分の心配性とか神経質さがかえって可笑しくなってくる。

 


部屋の掃除を回っている掃除のおばちゃんが廊下にいたので、「友人の部屋を開けてくれ!」と頼んだ。ほいほーいとおばちゃんは確認もなしにマスターキーでガチャガチャとドアノブを回して開けた。セキュリティもクソもない。

 


部屋の中を覗くとJの姿はない。バンコクに惚れて、いわば駆け落ちのように失踪したのだろうか。僕のことはもう置いて、インドに行ってください。僕は一生バンコクに残ります。そう語るJの姿が脳裏に浮かんだ。

 


が、トイレを開けたらウンコしているだけだった。セキュリティは無いが、確かにクソはあった。

 

 

 

無事チェックアウトを済ませ、観光するから荷物だけ置かせてもらい、僕らはまたナナプラザ周辺をぶらつく。

とにかくお腹すいたので、ちょっと良さげなレストランに入る。

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キンキンに冷えたビールが出てくる。そのほかの海老春巻きとかチャーハンとかカルボナーラとか、どれを頼んでも最高に美味くてびっくりした。もちろん現地人は高くて食べないのだろうけれど。3人で3000バーツ。9000円と高かったが、構わないくらいに美味かった。

 


同じ通りを進むと、タトゥースタジオがあった。もっと崩れかかったトタン屋根みたいなところでタトゥーいれて欲しかったんだけれど、期待を裏切るようにかなりの清潔感だった。日本にもこの規模のスタジオは無いだろう。

 

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JとTはデザインを決めた。Jは今回が人生初のタトゥーだった。左腕にチベット密教の文字。Tは幾何学模様っぽいシンプルな薔薇。

飛行機の時間が迫っていたので、あまり大掛かりなデザインは出来なかった。インドに行きたいのにここで飛行機に乗り遅れるなんて事だけは避けたかった。

 


デザインが固まったところで、僕はタトゥーを今回入れるつもりはなかったので表へ出て、マッサージに行った。

 


タイのマッサージはとにかく安い。

1時間300~400バーツくらいなので、1000円弱で受けられるし、結構上手い。

 


1時間程マッサージを受けて、そろそろあの2人もタトゥー入れ終わってるなー、と思いながらスタジオに戻ったが、なんとTだけがタトゥーを入れていて、これからJのタトゥーが始まったところらしい。てっきり同時に始めていると思っていたので、かなり焦った。飛行機は17時55分。空港まで1時間程かかるのに、すでに15時を回っていた。空港での検査うんぬん考えるとヤバそうだった。

 

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が、さすがにタトゥーを入れ始めたところで、途中で辞めさせるのだけはあまりに可愛そうだった。しかも始めてのタトゥー。もうなるようになるさ、と思いながらスタジオにあるチュッパチャプスを舐めた。あまり美味しくない。

 


40分程でタトゥーが完成した。なかなか綺麗に入っていて、タイでも充分なクオリティなのだと知った。時間は16時30分。昨日の電車のルートだと間に合わない。なので、最短距離で空港を目指す為に中間の駅までバイクタクシーで行くことにした。おそらく15分くらいは早くなる。

 


僕らは急いでホテルに荷物を取りに戻ってから近くのバイクタクシーの運転手と交渉し、バイクの荷台に乗った。

 

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三台のバイクにそれぞれが乗り、颯爽とバンコクの街を走り抜ける。信号は無視。当たらなければ良いらしい。僕は手荷物が少なかったけど、Jはでかいキャリーバッグを肩に担いでなかなかバンコクに馴染んでいた。こういった移動をしてなかったので、スリル満点、かなり楽しい。

 

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駅に到着してしばらくすると電車が来た。この調子だと17時半には空港に着く。なんとかなりそうだ。

 


空港に着いてチェックインを済ませ、荷物を預け、搭乗口に向かう。途中ヤバめなモニュメントがあり、写真撮っていくくらいの時間の余裕もあった。

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よく、「2時間前には空港に到着しておいた方がいい。」なんていうけど、全然そんなこと無さそうだ。20分くらい前に着けば充分だと学んだ。

 


振り返ると刺激的であまりにも長いバンコク滞在だった。これで旅行終わりで日本に帰るとなっても充分なくらいの密度。これから旅は始まったばかりだということが信じられずにいた。バンコクの思い出とインドへの期待を乗せた飛行機はバンコクの地から飛び立った。

 


という感じで、つづく。

 

悲しみのクンニ 〜kohhと宮本彩菜と白虎の洞窟〜

 

新年早々、インスタで踊る様に羅列されたワードがある。そう、「クンニ」だ。たった3文字しかないのに、あまりにも破壊力のあるその言葉は、早くも今年の流行語大賞を予感させた。

モデルの宮本彩菜に対しその彼氏、ヒップホップアーティストのkohhが2018年を早くもひっくり返す様な勢いでクンニする動画がインスタで公開され、注目を集めた。どうやら宮本彩菜誤爆らしい。

ブログの閲覧数を1人でも増やしたい僕としては「この手があったか!!」とただ唸るしかなく、この波に乗れとばかりに急いでクンニする為に女性器を部屋中探し回った。
しかし冷蔵庫からクローゼット、靴箱の中まで隅々見渡したが、女性器は家に無かった。

震災を経て今、「もしもの時の備え」が必要であるとあれほどまでにメディアで謳われていたのに、なぜ準備していなかったのか。悔しくて膝を叩いた。

悲しさを胸に、とりあえずその問題のクンニ動画を探す。どのサイトに飛んでも、なかなかクンニは出てこない。

「kohhのクンニ動画載せてます」という甘い言葉に誘われてサイトを開けば、悪質な出会い系サイトや身に覚えのない愛人クラブやエロ動画サイトの請求の雨嵐。58万円?大変だ!親にお金借りないと。

すぐに母親に電話をする。そういえば新年のおめでとうの電話すらいれてないのに、年明け一発目でエロ動画サイトに金払うから金を貸してくれっていうのはどうなんだろう。戸惑いの中数コール鳴った後に留守番電話のガイダンスが流れた。出なかったけれど、少しホッとした。気をあらためて動画を探す。

ようやくたどり着いた流出動画。荒れ狂うkohh。完全にコイツは狂っている。そう感じた。ただ、ちょっと待ってほしい。狂っているとはいえ、これは人間の動物的本能である。SNS上に上がったから批難されてるとはいえ、誰しもが性行為でクンニくらいしている筈だ。この叩かれ方はあまりにも可哀想である。イジメはイジメている人だけでなく、イジメを傍観している人にも罪がある。僕がこのブログを通してkohhを助けてあげないと。僕が守らないで、誰が守る!!

その為にも先ずは僕が誰よりもクンニについて知っておかなければならない。僕はそう思った時にはすでに玄関に向かい、靴を履いていた。kohh、お前のクンニは悲しみのクンニじゃない。喜びのクンニだっ!


クンニを調べるべく図書館へ。年明けの近所の図書館には意外と人が多かった。なんだ、みんな年末の段階で金を使い込んで年明けから本すらまともに買う金もないのか貧乏人め。軽蔑の眼差しを向けながら、僕はクンニを知るべく本を探し始めた。本屋で探さないのはお金がないからではない。決して、だ。

僕は日頃から本が好きで、図書館にもよく足を運ぶ。活字離れの現代人は、この図書館での本の探し方がよく分かっていない人が多い。

たまにずっと本棚をウロウロしていて目当ての本を探せない奴がいるが、それは大方素人だ。慣れている人は本のジャンル(政治、科学、歴史、哲学等)や、出版社、著者、本の割付の番号からでも棚の位置を探す事ができる。

探し出してから数十分が経った。おかしい。なにかがおかしい。季節外れの冷や汗がこめかみを流れた。図書館慣れしているこの僕が、どれだけ探しても目当ての本が無い。周りの人が「うわ、素人がいる」みたいな眼で僕を見てくる。これ以上の恥も無いと思い、受付で直接聞く事にした。

「すいません、本を探しているのですが。」

「はい、なんの本ですか?」

受付にはブーメランババアとAKB48の49人目みたいな女の2人がいたので、ブーメランじゃない方に尋ねた。


「クンニの本はどこですか?」

「あっ、えっ…、あの、え…?」

この女、どこまでも処女ぶっていたいのか、クンニなんて言葉はこの世にありませんみたいな顔をする。おそらくクリスマスに向けて彼氏を作るべく10月半ば頃から頻繁に合コンに顔を出したものの、いまいち理想のタイプの異性がおらず、そのままズルズルと独り身のままクリスマス直前まで迎えてしまい、自分が理想の高い高飛車だったことに気づいたが時すでに遅し、独り身で過ごすことになったので慌てて図書館の仕事のシフトを入れてワンチャン受付越しの出会いを求めてみたものの、クリスマスに図書館に来る男なんて所詮ガンプラオタクと嫁に噛み付く経済評論家くらいしか居ないものだから変な男と交際が始まってしまい、初詣なんて行かないでクンニだの岩清水だのを三が日に体験してしまい、あたし、こんな女になるつもりじゃ無かったわ!とばかりに処女ぶってる。
目を覚ませてやるとばかりに僕ももう一度言った。

「クンニ。」

女は顔を赤らめながらも、僕を生物・科学の棚列に案内してくれた。やっぱり知ってるじゃねぇか。お礼にクンニしてあげますよと言いたかったけれど、辞めた。

それからひたすら棚の本を探したのだけれど、人体の秘密とか人体医学とかしかなくて、クンニは無かった。補足だが、女性器も無かった。

結局図書館に来た甲斐もなく、僕は携帯で調べた。クンニとは何か。

クンニリングス(英: 仏: 独: cunnilingus)は、女性器(クリトリス尿道口・膣・小陰唇・大陰唇)を直接舌や唇・歯などで舐めて性的刺激を与える行為。オーラルセックスの一種。俗ラテン語のcunnus(外陰部)とlingere(舐める)が語源である。日本語では「クンニ」と略すことが多い。セックスの際にすることが多い。
(Wikipediaより引用)

クンニって略称だったのか!
クンニだけだとなんか俗っぽいけど、クンニリングスになるとなんかファンタジー感満載である。
フロドが叔父から受け取った「一つのクンニリングス」に取り憑かれながらも魔法使いとかエルフとかみんなでクンニクンニ言いながら滅びの山にクンニリングスしに行くというとてつもなく壮大なファンタジー。孫の代まで語り継ぎたい物語。

なんだかクンニがファンタジックな感じになってきた。ってか『セックスの際にすることが多い』って、他はいつするんだ?法事の際か?

これだけでもkohhを助けてあげられそうだが、更にクンニリングスについて調べてみる。

歴史と文化的意味

クンニリングスは西洋社会では近年までタブーとされていたが、中国の道教では重要な位置を占めていた。道教では体液は非常に重要な液体であり、よってその喪失は生命力の衰弱を引き起こし、逆に、それを飲むことでこの生命力(気)を回復することができると考えられていた。
(Wikipediaより引用)

つまりかなり柔らかく言うとマ○汁飲むとHPが回復するらしい。次回作のファイナルファンタジーポーションの代わりにコレだな。ボス戦の途中でヤバい時は仲間の女をまんぐり返しするしかない。呪文はもちろん「ベホマ○汁!」やっぱりクンニとファンタジーは切っても切れない関係性かもしれない。

更に文章に着目してみる。『中国の道教』とあるが、皆さんご存知だろうか。道教とは儒教、仏教に続く中国三大宗教の一つなのだ。これらは日本文化と非常に関わりが深く、日本の社会の礼節礼儀の基本ベースだ。

先輩、先生など、目上の人を敬いましょう。という教えが儒教

苦しいことに耐え、正しく生きましょう。という教えが仏教。

クンニしましょう。という教えが道教

つまり両親や年上の人に敬語を使い、尊敬しながらも嫌なこと、辛いことに耐え、嘘をつかずに正直に人と接しながらクンニする。これで君も今日から神だ。法事でもクンニして良い。

トイレなんかにある良い言葉を並べた「親父の小言」をご存知だろうか。その一部にも盛り込んでも不思議ではない。

 

親父の小言


火は粗末にするな
難儀な人にはほどこせ
風吹きに遠出するな
人には貸してやれ
クンニしろ
貧乏は苦にするな
借りては使うな
義理は欠かすな
大酒は飲むな
人の苦労は助けてやれ
クンニしろ
年寄りはいたわれ
家内は笑って暮らせ
出掛けに文句を言うな
万事に気を配れ

二回混ぜ込んでも一切遜色ない。


さて、ここまでくるともうクンニがファンタジーであり、仏の教えでもあることが分かっただろう。これでkohhも今日からまた安心してクンニできる。正に喜びのクンニ。

もっと調べていくと、クンニ美談が更に続々と出てきた。僕も感極まって涙するほどの文章があったので、ここに引用する。

「3つの山頂の偉大な薬」が女の体に見出され、それは次の3つの汁、もしくは精からなる。1つは女の口から、もう1つは胸から、そして3つ目の、最も強力なものは「緋色の茸の頂」(恥丘)にある「白虎の洞窟」からのものである。
オクタビオ・パス『conjunctions and disjunctions』


メキシコの詩人、オクタビオの詩である。白虎の洞窟とはなんて詩的だろうか!

合コンで狙った女に「白虎の洞窟に行かないかい?」なんて赤ワイン片手に囁いたらイチコロである。こんな詩的な言葉を巧みに使う男と出会っていれば図書館の女もクリスマスは独りで図書館勤務しなくてよかったのに。

まぁ白虎の洞窟に行くのが男で、白虎の洞窟でイクのが女なのだが。

と、ここまでずっと新年からクンニクンニクンニクンニ言ってると、本当にクンニしたくなってきた。だって生命力回復するし、白虎の洞窟だし。決して性的にクンニしたい訳じゃないからね?

部屋に女性器転がってないから、じゃあ風俗でもいくかと思って今度は「クンニ 風俗」で調べてみる。僕のGoogleの検索履歴がクンニだらけになって恐ろしいことになってきた。

検索結果を見ると、出るわ出るわSMやらM性感のお店のホームページ。五反田、鶯谷が多いらしい。まさに東京のローマといったところか。

めぼしいところを調べて早速予約する為の電話をかけた。お触りNGとかクンニNGなんて風俗店だったら全く行く意味がないので、確認する必要がある。待ってろよ!俺の白虎の洞窟!

高鳴る期待も虚しく、数コールかけても電話が繋がらない。この風俗店何やってるんだ!?商売する気あんのか!こっちは顧客だぞ!?焦りが募った。

諦めて違う風俗店のホームページを調べようとすると、すぐに着信が。携帯を触ったままなのでワンコールもせずにすぐに電話に出た。きっといま電話した風俗店に違いない。

「あのっ!クンニしたいんです!クンニ!クンニ出来る子でお願いします!あとパンスト破りオプションで!」

勢い余って叫ぶ様に電話で伝えた。僕はもうクンニに取り憑かれていた。ちなみにパンスト破りに関しては、後日話すとしよう。

返答を待つ僕の耳に衝撃が走った。

「あんた、何言ってるの?私よ。お母さんよ。」

なんてことだ。
顔が真っ青になった。
身体が震えた。

そういえば、さっき金を借りようと電話していたではないか。
母親に年明け一発目、クンニ!と叫んでしまった。母親が続けて尋ねてくる。

「さっき電話してきたじゃない。何かあったの?」

「いやちょっと、さっきのはお金借りようと思って。」

「あんた正月から何言ってるの!?どうせ風俗にでも行くつもりでしょ?バカじゃないの!?」


電話をガチャ切りされて呆然とする僕。

これが誤爆ってやつですか。

審美眼

「お前の審美眼を見せてみろ。」

 

悪天候の続く夏のお盆の最終日、僕はそんな挑発的な言葉を受けてしまい、動揺した。審美眼?なんじゃそら。である。

 

ただ、そう言ってきたおじさんは顎に生えた白毛と金毛の入り混じった髭を指で触りながら、眼は真っ直ぐに僕を見据えていた。お前がどれ程の者か確かめてやろう。とでも言いたげな眼。

 

僕は戸惑った挙句の果てに、おじさんの問いに答えることにした。緊張からか、背中にはTシャツに滲む程の汗をかいていた。

 

「いや…ちょっと僕には分かりません。」

 

おじさんは僕の返答によほど落胆したのか、先程までの鋭い眼光はフッと消えてしまい、ため息をついた。

 

「世の中は沢山のもので溢れている。人間、情報、音楽、アート、文化。それらはなんの関係性もなさそうで孤立しているが二極端に振り分けることができる。それが、美しいのか、美しくないものか、だ。お前はまだ幼い。世の中の美しいものに触れて知るがいい。まぁ、いい。また改めて来い。」

 

そう言い放つと、僕がもう居なくなったかの様に無関心になり、部屋の奥に消えていった。

 

いまにも降り出しそうな雲行きの中、一人歩く僕。接戦の末の敗北とあれば多少悔しいのだろうが、今回は全くの無知。悔しさというよりも虚しさが胸を過ぎった。

 

審美眼とは何か。先ずはそれを調べた。デジタル大辞泉にはこうある。


しんび‐がん【審美眼】
美を的確に見極める能力。


要は美しいものとそうで無いものを的確に見極めるということだ。「審美眼の養い方」などで調べてみると、審美眼とは元々の才能ではなく、より多くの美しい物と触れ合い、かつ美しい物の基準を知ることで得られることができるそうだ。つまり教養である。

 

あのおじさんが僕に求めていたのは美しいものを選ぶ力だったということだ。あの髭を触る態度を思い出すだけで悔しくなってきた。必ずや審美眼を養い、あのおじさんを驚かせてやりたい。そう思った僕は早速、行動に移した。

 

タクシーに乗り込み15分弱。僕が乗ったタクシーは上野公園にある東京都美術館に着いた。

 

単純な考えかもしれないが美しいものは美術館にある!と考えた僕には他に術はなかった。ここで多くの美しいものを観て感じることが出来れば審美眼を養える。そう思った。

 

東京都美術館ではボストン美術館の至宝展~東西の名品、珠玉のコレクション』が開かれていた。

 

当然前売り券を持っている訳でもなく、一般料金1600円を支払い中へ。

そこには古代エジプトの発掘品や日本・中国の作品、モネやゴッホの作品まで多く飾られていた。現地では写真撮影は出来なかったのでホームページ上の画像を挙げる。

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エジプトのツタンカーメン王頭部。

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釈迦の入滅を絵にした涅槃図。

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ゴッホによって描かれた郵便配達人。

 


それらの作品は、何世紀も超えた今もなお観るものの心を揺さぶる名作の数々だった。美しいものを観る。という教養は単に勉強とは違って楽しいものかもしれない。


しばらく館内を見て回った後、僕は再び外に出てタクシーに。向かう先はあのおじさんのところだ。

 

建物に入ると陳腐な鈴の音が鳴る。

 

中からつまらなそうな顔をした先程のおじさんが出てきた。なんだ、またお前か。とでも言いたげな顔だったが一変、ほほう、お前もジェダイの一人になったのか。的な少し感心した顔つきになった。


「また選ばせてください。」


「…いいだろう。」


おじさんが懐から取り出したいくつかの写真を広げた。さっきと全く同じ写真達なのに、どうしてだろう。僕には全く違って見えた。僕には迷いなどなかった。

 

「この子にしてください!」

 

「…ふむ、この短期間でこの成長、大したものだ。」

 

そう言ったおじさんは顔は無表情なのだがどこか、喜んでいる様にもとれた。まるで息子の成長を喜ぶ父親のようだった。

 

「愉しんでこい!」そう告げたおじさんは背中を向けたまま親指を立てた。そして部屋の奥に消えた。

 

 

ソープランドに90分20000円コースで入ったけど指名した子がツタンカーメンそっくりの顔だった。審美眼って、なんだ?

「時間にルーズ過ぎるのは人としてクソだな!」


「晴海埠頭行 6時59分着」と電光掲示板に輝く文字を見ながら、僕はワナワナと震えていた。背後にはローソン、正面にはバス停を見据える位置。そして、早朝の空は青く澄んでいて、どこまでも高い。

腕時計を見ると7時。だが来るべきバスの姿は未だにない。続けて電光掲示板に映る文字には、「4分後到着」とある。

なぜ震えているのかというと、僕は当然ウンコをしたい訳で、そこの説明はあまり必要なさそうなので割愛する。

ではなぜブルブルとではなく、ワナワナと震えるのか。ここには決定的な違いがある。

人が恐怖に追い込まれた時、他に手段もなく、恐れおののきながら震えてその時を待つしかない、そんな時の震えは「ブルブル」と震えるものだ。

だが、そこに僅かながらでも選択肢があったり、可能性があるとすれば。そこには迷いも混じり、「ワナワナ」と震える訳だ。

ただ、都道304号線を通り過ぎる通行人から見れば、ブルブルもワナワナも変わりなく、ただのキチガイがバス停で震えている様にしか見えない。

ここでいう選択肢とは、4分後の到着までの間に背後のローソンで速やかにウンコを済ませてしまうか、4分待ってバスに乗り込み、仕事場で悠久の時を味わうか、この二択だ。普通に考えれば迷いなくローソンに駆け込む。

ただ、ここで考慮しなければいけないのがいくつかあって、まずバスが時刻通りに到着するかだ。

遅延がない限りは正確な発着時刻を守る電車に対して、バスは道路の様々な交通状況に左右されてか正確に来るということはほとんどない。

道路走ってんだから時間通りじゃなくても当たり前じゃないかぐらいの顔でバス停に到着するくせに、発車する時間はシビアで、予断なく走り去っていく。なんとも高飛車な野郎だ。

一度6時59分に遅れて来たバスが、果たして正確に4分後に来るのか。そんなことは信用ならない。人の信用は築くのは難しいが、壊すのは簡単だとよく言うが、バスも同じようなものだ。信用なんてするものじゃない。

「時間にルーズ過ぎるのは人としてクソだな!」

心の中で叫んだ。

もし4分後のバスに乗り遅れた場合、次の発着時刻は更に20分後の7時24分。これだと絶対に僕は仕事に遅刻する。

さてどうしよう、ワナワナと震えながら考えているといつの間にか、あと1分で到着と電光掲示板には改めて表示されていた。

1分でローソンに駆け込んで用を足してバスに乗り込むなんて、そんな箱根駅伝の後半の区間の鮮やかなバトンパスみたいなアクロバティックはできない。

下手すればレジ前で脱糞して、「ポンタカードなんかありましぇん!」と叫ぶような阿鼻叫喚な姿しかない。黒板なんかあればバンっと叩いて髪を振り乱す。

でもなんというか、自然の力には人間はいつの世も太刀打ちできないのであって、限界を超えた腹痛に負けた僕はタヌキみたいな体勢でヨロヨロとトイレに入る。

数分後半ば諦めた感じでローソンを出る。もう出すとこ出したんだから、仕方ないじゃないか。そんな境地だ。

その時、ローソンの表には一台のバス。晴海埠頭行と煌々と照らされた電光表示。

僕のウンコ、待っててくれたのか。信用しないなんて言ってしまってごめんね?今度お詫びに一緒にドライブいこうね、バスで。

バスに乗ろうとしたその時、無残にもプシューッっという音と共に閉まる扉。

え、ウソだろ。僕は呆然と立ち尽くした。ガラス越しに運転手と目が合う。

ザマァみろとばかりに、ニヤっとする運転手。僕はブルブルと震えながらバスを見送った…。

結局その後の24分着のバスも遅れて35分くらいに到着し、仕事場に30分程遅れての遅刻。ペコペコと頭を下げていると、職場の人からの一言。

「時間にルーズ過ぎるのは人としてクソだな!」

そうだよ、ウンコしてたんだよ。

上京タラレバ娘

僕は割と中華が好きだ。

とりあえず最後に片栗粉でトロミをつけとけばいいという安易な考えで炒められた食材達と、日本食にはない独特な味。

料理は専ら食べる専門なので、味付けがどうなっているのかは知らないが。

その料理に黒酢をぶっかけて食べる。
黒酢が好きで好きでしょうがなく、一時期は黒酢を持ち歩いて使っていたくらいだ。

もう元の味なんて分からなくなるくらいに黒酢をぶっかける。料理を作った人の気持ちを考えろ!なんてしばしば言われるのだけれど、そんなの金払って食べる側の自由だと思う。
だから、冒頭で割と好きと書いた。

ただ、中華で黒酢を頼むというのは簡単そうで実に難しい。何故なら、テーブルに置かれた黒酢、あれは黒酢じゃないんだ!

いや、黒酢なのだけれど、醤油と半々で割ってある黒酢なのだ。


黒酢と醤油のハーフ。ハーフの芸能人とかいま人気だけど、調味料に至っては駄目。インドカレー屋の店員がインド人なのとパキスタン人なのくらい違う。

となると当然、ハーフ黒酢じゃない、純たる黒酢が欲しいから、店員に頼むしかなくなる。


「すいません、黒酢ください。」


「テーブル ニ アリマスヨ。」


9割、いや10割と言っていいだろう。店員とのやりとりはこうなってしまう。しかもだいたい店員は中国人なので、カタコトの日本語で。

いや、テーブルの黒酢の存在は分かってるんです。

でもこいつはハーフなんです。半端な野郎なんです。僕はたとえ不器用でもいい。純粋な奴がいい。黒酢が欲しいんです!!という葛藤が心の中で起きるのだけど、流石に恥ずかしくて口には出来ない。

でも伝えないとハーフ黒酢を使うしかなくなるので、緊張しながら更に頼むことになる。僕の頬は赤らみ、戸惑いと葛藤が瞳孔を震わせる。


「あの…僕が欲しいのは…純粋な…」


ここで一つポイントがある。言葉というのは非常に難しい。同じ言葉でも、その背景や感情によって、同じ言葉でも深みが全くもって違う。

どれだけ欲しいのか、どのようにしてそれを知り、欲しくなった動機、その渇望の強さ、これらを相手に分からしめなくては欲しいものも手に入らない。安易になんでも頼めば手に入る世の中ではない。どのくらいの気持ちを込めればよいのかというと…



ーーーーーーーーーーーーーー



「あの…僕が欲しいのは…純粋な…」

「ごめんなさい。あの、私、まだそんなつもりじゃなくて…。」



そう言って断ってしまってから、どのくらいの月日が経ったろうか。大学生だったあの時の彼は、今、どこにいて、何をしているのだろう。

丸美は大きくため息をついた。寒空に昇る白い吐息。月は薄っらと霧の中に居て、ボンヤリとしている。

思い出して懐かしいという気持ちよりも、後悔の気持ちが大きいのかもしれない。

宮城県日本海側の小さな港町から上京してきて間もない丸美は、田舎の潮風よりも東京のビル風の方が寒いことに驚いた。

なんとなく、田舎を出て上京してみたい。そんな想いを抱え、親の反対を半ば押し切った形で東京の就職先を選んだ。

田舎の大学を出たくらいの丸美の就職先は小さな広告代理店の会社で、給料もパッとせず、働く他の社員もどこか陰湿で、居心地が悪かった。

田舎にやっぱり帰ろうか。そう思う時もあった。そんな辟易した気持ちのまま、転職する勇気も出ずに2年が経った。


そんなある日、丸美が職場の近くの喫茶店で昼休みを過ごしていた時、突然後ろから声をかけられた。


「あれ?…丸美?」


丸美が振り返ると、そこには昔と変わらないままの彼がいた。告白を断ってから音信不通だった彼がいま東京にいるなんて。



「どうしてここにいるの!?」
「なんでここにいるの!?」


聞きあうタイミングが一緒で、思わず笑う二人。それから改めて丸美が尋ねた。


「たかゆき、こっちに就職したの?」


彼は少し照れたように、頭をポリポリと掻きながら答えた。


「違うんだ。就職じゃなくて。…あのさ、いまでもやってるんだ。活動。」


彼と丸美は大学生当時、同じサークルのメンバーだった。

漁師の娘だった丸美は地元で採れる名産物の鱈がとても好きだったし、それが日本中に送り届けられていくのを誇りに思っていた。

自分もそんな地元の自然の恵みに関わる仕事をしたい。そう思った丸美は高校、大学と漁業、農業関係の学校に進学した。

その大学には地産地消サークルというのがあって、丸美はすぐさま参加。地元の名産品、鱈や馬レバーの紹介や販売、更には消費が増すように提案書を役所に出す事もあり、本格的なサークルだった。そこのサークルに彼、たかゆきが居た。

お互いの意見を交わし合う内に、丸美とたかゆきは親密になり、毎日の様に一緒にいた。

次第にたかゆきは丸美に恋心を持ち、告白をしたが、丸美は同じサークルの仲間としてしかたかゆきを見ることが出来ず、断ってしまった…。



「へぇ、そうなんだ。東京に来てからは何をしているの?」


丸美が尋ねると、たかゆきは少し誇らしげな口調で説明しだした。


「いまさ、TPPって話題になってるだろ?あれが可決されるとさ、海外の質の悪い安価な食品が大量に日本に入り込んで来て、日本の漁業や畜産農業がダメになってしまうんだ。だから団体を組んで、国会や役所の前でシュプレヒコールをするんだよ。」


シュプレヒコール?何それ?」


「まぁ、簡単に言うとデモさ。」


それを聞いた丸美は、軽くショックを受けた。

デモだなんて、たまにテレビのニュースでも見るけれど、あんなのがまかり通るなんて稀でしかない。そんなくだらない事に熱くなっているなんて、どうかしている。丸美はそう感じた。

職場の人間関係や仕事でストレスが溜まっている自分に対し、対照的に彼は忙しそうだけれど、楽しそうにしている姿が余計に丸美を苛立たせた。


「そんなくだらないことしてないで、地元で働けば?」


丸美の口から出た棘のある言葉とその口調にたかゆきは一瞬たじろいた。


「そ…そうだよな。くだらない事だよな。ハハハ、こんな事しないで地元で働くしかないよな。」


「じゃあ、そろそろ、いくわ。」


たかゆきは飲みかけのコーヒーを残して、喫茶店を出ていった。たかゆきの落ち込んだ後ろ姿を見たとき、丸美は少し、後悔した。

静かになる喫茶店。聴こえるのはたまに他の客がコーヒーを啜る音。

私、何やってるんだろう。

深い深いため息をつく丸美。交際を断った時の事を最近になっても後悔しているし、今の職場に就職したことも後悔して。あげく、一生懸命に活動をしているたかゆきに、くだらないというキツい言葉をぶつけたことも既に後悔していた。

本当は私も付き合いたい。仕事も自分の好きな仕事がしたい。地産地消の活動もしたい。くだらないなんて言ったのは本当はたかゆきの生き方が羨ましくて、拗ねて言った言葉だという事も、いまはよく分かってる。


もう後悔なんて、したくない。


丸美は慌ててバックの中からケータイを取り出し、アドレス帳を調べた。
岡田孝之の名前があった。番号も変わっていなければ繋がるはず。

祈る一心で電話を鳴らす丸美。
接続音が鳴る。どうやら今も番号は変わっていないらしい。

数コールの内に電話が繋がった。


「もしもし、あ、私。あのさ、さっきは酷いこと言ってしまってごめんなさい。」


「あー、いや、いいんだよ。学生でもないのにこんな事続けてるからくだらないって言われても仕方ないさ。」


明るい声で返してくるたかゆき。本当に優しい人だ。と丸美は感じた。

ふと、丸美は不思議に思うことがあった。なぜ、たかゆきは地産地消のサークルに入っていたのか。それに今でもどうして積極的に活動を行なっているのか。

たかゆきの家族は畜産農家でも漁師でもない。サークルに居た当時も何度か聞いた事があるが、いつも理由は教えてはくれなかった。聞くなら今だと丸美は思った。


「あのさ、たかゆきは、どうしてその活動を続けているの?それに大学の時のサークルもどうして入ってたの?」


電話越しでも、たかゆきが照れくさそうに頭を掻いているのが分かる。しばらく沈黙した後に、たかゆきが説明しだした。


「僕さ、実を言うとサークルに入った時は全然地産地消なんて興味なかったんだ。飲みサーとかは酒弱いから入りたくなかったしさ。で、そんな時に丸美と会って、いろんな丸美の熱い気持ちを聴いていて、僕も本気になったんだ。純粋に地元を想う気持ちっていうか、好きな事に取り組む気持ち。だからそんな丸美を見ていて僕は君を尊敬していた。それに…」


「それに?」


次の言葉が聴きたくて、ドキドキする丸美。


「それに…魚も肉も苦手だったけど、食べれる様になったんだ!鱈も。レバーも。」


子供みたいな事を言うたかゆきの話で思わず笑う丸美。本当に彼は今も変わっていないんだ。そう感じた。そんなたかゆきの事を愛おしくも感じる。

間を少し置いて、たかゆきがまた話し出す。


「だから丸美の地産地消の願いを僕が叶えてあげなくちゃって、今でも想っているんだ。きっと君も喜ぶと思って。」


私の気持ちも伝えるなら今しかない。丸美はそう思った。たかゆきに気持ちを伝えて、付き合いたい。

そう思った時、先にたかゆきが話し出した。


「あの…僕が欲しいのは…純粋な…純粋な君が欲しいんだ!丸美、僕と付きあってほしい!」



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このくらいの気持ちを込めれば、間違いない。来る。必ず黒酢は来る。


「あの…僕が欲しいのは…純粋な…黒酢なんです。」




「アリマセン。」


もう後悔しかない。デモでもやるか。